研究課題/領域番号 |
11J06582
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
村上 昌平 東北大学, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | Keap1-Nrf2系 / 造血幹細胞 / 幹細胞性維持 / 増殖・分化制御 / 白血病幹細胞 |
研究概要 |
1.造血幹細胞・前駆細胞(HSPC)におけるNrf2の役割の解明 造血細胞においてKeap1を欠損させた(Keap1CKO)マウスの表現型がNrf2依存的かどうかをKeap1CKO:Nrf2^<-/->マウスを用いて検証した。その結果、Keap1欠損による表現型はNrf2欠損によって正常化した。ゆえに、Keap1CKOマウスの表現型はNrf2活性化に起因することが示された。次に、Keap1欠損によるHSPCの増加の原因を検討するため、細胞周期を調べた。Ki67の細胞染色で評価すると、Keap1欠損のHSPCは細胞周期に異常はなかった。したがって、Keap1欠損によるHSPCの増加は分化抑制による同分画の蓄積が原因であると考えられた。一方、HSPCの分化には細胞内活性酸素種(ROS)レベルの上昇が必要であると示唆されている。そこで、ROSレベルと還元型グルタチオン濃度を評価すると、Keap1欠損のHSPCではROSレベルに変化はなかったが、還元型グルタチオン濃度が高く、細胞が還元状態に強く維持されていると考えられた。以上より、HSPCにおけるNrf2活性化は、ROSレベルを低く保ち続けることで分化を抑制していると考えられる。 2.白血病幹細胞におけるNrf2の役割の解明 誘導的白血病発症モデルマウス(PtenCKO)の実験では、Nrf2^<-/->:PtenCKOマウスはPtenCKOマウスと比較して白血病を発症しやすいという結果を得ている。本年度は、この表現型の細胞自律性を検討した。両マウスの骨髄細胞を野生型レシピエントマウスへ移植し、白血病誘導を行うと、Nrf2^<-/->:PtenCKOの骨髄細胞をもつレシピエントの方が早く死に至った。ゆえに、Nrf2は白血病発症に対して抑制的に作用することが分かった。今後は、これら両マウスの白血病幹細胞の性質を評価する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
造血幹細胞・前駆細胞におけるNrf2活性化は細胞周期に変化をもたらさず、分化を抑制することで、未分化性の維持に寄与することが示された。ゆえに、Nrf2は白血病幹細胞の幹細胞性維持にも貢献していると考えられる。すでにPtenCKOマウスとNrf2^<-1->:PtenCKOマウスから、骨髄細胞自律的な白血病細胞を得ることが可能であるため、両マウスの白血病幹細胞の性質を調べることで、上記仮説を検討できる。
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今後の研究の推進方策 |
Keap1CKOの造血幹細胞・前駆細胞を用いた実験では、これまでLin^-Scal^+c-Kit^+(LSK)Flt3^-細胞に着目して解析を行ってきた。この分画は多くの短期造血幹細胞および多能性前駆細胞を含むため、造血幹細胞(長期造血幹細胞)におけるNrf2の役割を検討するには、まだ区分が不十分である。今後は、Keap1CKOマウスのLSKCD48^-CD150^+細胞を解析し、造血幹細胞におけるNrf2の貢献を検討する。一方で、白血病幹細胞の実験では、連続移植実験を行うことで、白血病幹細胞の維持を検討する。さらに、細胞周期および遺伝子発現を調べることで、白血病幹細胞の幹細胞性維持能を調べる。
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