研究課題/領域番号 |
11J06599
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
中西 亮 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | カーボンナノチューブ / 金属原子ワイヤー / ユーロピウム / X線光電子分光分析 / 透過型電子顕微鏡 / 電子エネルギー損失分光 / 窒化ホウ素ナノチューブ |
研究概要 |
1.直径1.4±0.1nmの均一な単層のカーボンナノチューブ(CNT)を用意し、ここに、本研究員が以前開発した自己集合的ナノフィリング法を適用することで、平均4列から成る金属原子ワイヤーを選択的に多量創製することに成功した。創製したサンプルはドイツ・ベルリンにある放射光施設BESSY-IIにてX線光電子分光分析により解析し、結果、内包した金属(ユーロピウム)から単層CNTへ金属原子1個あたり約2電子のドープが存在すること、また金属原子ワイヤーが一次元的な電子状態を有していることが判明した。以上の内容は学会にてポスター発表済みであり、論文もほぼまとめ終えた段階である。 2.上記を含めた直径0.7~5nmの金属原子ワイヤーにおいて、透過型電子顕微鏡と電子エネルギー損失分光分析を組み合わせた装置により、各金属原子ワイヤー内包CNTの構造、および内部金属の価数についての類推を行った。結果として、内部のユーロピウムがおそらく2価であることが判明し、上記X線光電子分光分析による結果と良い一致を示した。また、特に細い2列の金属原子ワイヤーにおいては観察中にらせんを描くようにして金属原子ワイヤーが動く様が観察された。以上について学会にてポスター・口頭発表を行っており、論文執筆も着手している段階である。 3.以上は結果として金属原子ワイヤーからCNTへの多量の電子ドープを示唆しており、CNTの特性変化・向上が強く期待される。ただし、元々の目的である金属原子ワイヤー自体の評価を行うのには適していない。そこで本研究員は、より理想的な鋳型として、6.0eVという広いバンドギャップを有する窒化ホウ素ナノチューブの合成に着手をした。合成は、CNTを鋳型とし、ここに窒化ホウ素源としてボラン-アンモニア複合体を導入し、1400℃でアニーリングすることで行った。結果として直径約0.7nmと細い、金属原子ワイヤーの創製に適した内部ナノ空間を有する単層の窒化ホウ素ナノチューブの合成に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
直径制御されたカーボンナノチューブを用いることで本数制御した金属原子ワイヤーを選択的に多量創製することに成功し、且つその電子状態の評価・議論もできており、研究計画を概ね満たしている。また、当初の計画に対しより理想的な鋳型である単層窒化ホウ素ナノチューブの合成にも成功しており、予想以上の結果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
金属原子ワイヤー内包カーボンナノチューブに関しては、x線光電子分光分析および透過型電子顕微鏡観察に関するそれぞれの結果を論文に纏めるとともに、その物性変化、特に電気伝導性に関する評価を行っていく。手法としては、一本のナノチューブで行う事が理想であるが、困難な場合は薄膜を作製して評価を行う。 カーボンナノチューブ内に合成した窒化ホウ素ナノチューブについては、合成とその評価に関して論文にまとめた後、大気加熱および還流によるカーボンナノチューブの除去、または超音波分散によるカーボンナノチューブからの抽出を試み、その後内部空間を鋳型とした金属原子ワイヤーの創製を行う予定である。
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