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2011 年度 実績報告書

X線結晶構造解析に基づく改変型チャネルロドプシンの創出

研究課題

研究課題/領域番号 11J06643
研究機関東京大学

研究代表者

加藤 英明  東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)

キーワード構造生物学 / X線結晶構造解析 / チャネルロドプシン / ロドプシン / 光遺伝学 / 神経生物学 / 陽イオンチャネル
研究概要

特別研究員採用時にはチャネルロドプシン(ChR)の結晶こそ出ていたものの、構造解析が可能な分解能の反射は得られずにいた。そこで申請書に記したように、LCP法と呼ばれる結晶化法を導入し、この結晶化法で得られた結晶を大型放射光施設SPring-8に持って行き測定を行った。リファインを重ねた結果、最終的に2.3Å分解能のデータセットを取得することに成功した。ネイティブデータセットの取得後は水銀、金、白金、鉛など多数の重原子を用い、共結晶法によって重原子を導入し、重原子の異常分散から位相決定を行おうと試みた。30以上もの重原子化合物をスクリーニングした結果、塩化メチル水銀を添加した時にサンプルの色が変化したことから、この化合物がタンパク質と強固に結合していると予測し、この化合物の添加濃度や結晶化条件等をスクリーニングし、最終的に3.4Å分解能でこれのデータセットを取得することに成功、多波長異常分散法により位相決定を行うことが出来た。得られた閉状態の結晶構造から発色団周りの構造を含め、ChRの詳細構造を得ることが出来た。また、従来型微生物ロドプシンとは異なり、ChRがダイマー構造を形成していることや、チャネル活性に重要な対イオンの存在を同定することが出来た。何より特筆すべき点としては、空間充填モデルと表面電荷の分布からChRのイオン輸送経路を推定し、電気生理学的解析からその推定を裏付けることが出来た点である。これら一連の結果はChRの分子メカニズムを今までに無い程詳細に明らかにしたというだけでなく、神経生物学への発展にも通じる大きな一歩であるという点で国内外の学会で高く評価された。これらの結果を論文にまとめたところ、学術雑誌Natureにアクセプトされ、2012年2月16日号の表紙を飾るに至った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

当初1年目の予定であったチャネルロドプシンの結晶構造解析に実際に成功し、その結果を論文にまとめ発表することが出来たため。また、2年目以降の予定である中間体の構造解析や、構造情報を元にした変異体の作製に関しても、現在実際にプロジェクトが進展を見せているため。

今後の研究の推進方策

今後は当初の予定通り、開状態が長くなる変異体を用いて、ChRの開状態の構造決定に向け一層の努力をする所存である。また、既に今回得られた閉状態の構造を元に量子力学計算を行うことで、吸収波長に影響を与えそうなアミノ残基の候補がいくつか得られてきているため、今度はそれらのアミノ酸残基に変異を導入することで、実際に吸収波長が変化するか検証を行う。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2012 2011 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) 備考 (3件)

  • [雑誌論文] Crystal structure of the channelrhodopsin light-gated cation channel2012

    • 著者名/発表者名
      Hideaki E.Kato, Feng Zhang, Ofer Yizhar, Charu Ramakrishnan, Tomohiro Nishizawa, Kunio Hirata, Jumpei Ito, Yusuke Aita, Tomoya Tsukazaki, Shigehiko Hayashi, Peter Hegemann, Andres D.Maturana, Ryuichiro Ishitani, Karl Deisseroth, Osamu Nureki
    • 雑誌名

      Nature

      巻: 482 ページ: 369-374

    • DOI

      10.1038/nature10870

    • 査読あり
  • [学会発表] Crystal structure of channelrhodopsin, a light-gated cation channel2012

    • 著者名/発表者名
      Hideaki Kato
    • 学会等名
      Gordon Research Conferences "Ligand Recognition & Molecular Gating"
    • 発表場所
      アメリカ カリフォルニア州Ventura
    • 年月日
      2012-01-19
  • [学会発表] Crystal structure of channelrhodopsin, a light-gated cation channel2012

    • 著者名/発表者名
      加藤英明
    • 学会等名
      若手分野間連携プロジェクト冬の会議in箱根6^<th> Circular
    • 発表場所
      強羅静雲荘(神奈川)
    • 年月日
      2012-01-12
  • [学会発表] X-ray crystallographic analysis of channelrhodopsin, light-gated cation channel.(演題番号2T7pI-6)2011

    • 著者名/発表者名
      加藤英明
    • 学会等名
      第34回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川)
    • 年月日
      2011-12-14
  • [備考]

    • URL

      http://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/2012/03.html

  • [備考]

    • URL

      http://www.u-tokyo.ac.jp/ja/todai-research/research-information/channelrhodopsin/

  • [備考]

    • URL

      http://www.spring8.or.jp/ja/news_publications/press_release/2012/120123_3

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公開日: 2013-06-26  

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