研究課題/領域番号 |
11J06748
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
田中 拓郎 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | スピンホール効果 / 異常ホール効果 / 内因性機構 / 外因性機構 / サイドジャンプ項 / AC異常ホール伝導度 / ベリー曲率項 |
研究概要 |
スピンホール効果の発言機構の中でも外因性機構に関して理解が遅れたいた。そのような中で我々は遷移金属不純物に由来するスキュー散乱項及びサイドジャンプ項を単一不純物Anderson模型に基づき理論解析する事に成功した。結果として内因性項同様、外因性項もスピン軌道偏極<I・s>を用いて表現できる事が明らかになった。この事実に基づき、内因性及び外因性項を同様の観点から比較することができる。また導出した外因性項の表式に基づき解析を行うと、Cu等の単純金属中のdiluteなPtに由来するサイドジャンプ項の寄与は、Pt単体の内因性項の寄与と同程度である事がわかった。これとは対照的に、スキュー散乱項は大きくない。 スピンホール効果同様、異常ホール効果の起源及び発言機構に関する議論は長年の未解決問題である。今回、M.-H.KimらがCa_xSr_<1-x>RuO_3におけるAC異常ホール伝導度を測定することに成功し、この系における異常ホール効果の起源を理解するため、内因性項の理論計算と比較した。本研究を通して、DCに限らず有限のωにおけるσ_<xy>(ω)の振る舞いを通して異常ホール伝導度を解析する事で、発現機構に関する長年の未解決問題を解決する糸口になると期待される。 以前の我々の研究から、Berry曲率項では準粒子減衰率γ→0に限り正しくACを解析するには不十分である事がわかっていた。従って、本研究で有限のγにおける正しい内因性項の表式に基づく理論解析と実験とを比較し、内因性か外因性機構かを見極めた。結果として、σ_<xy>(ω)及びσ_<xx>(ω)を再現する事に成功し、実験結果は本質的に内因性機構で説明できる事がわかった。また内因性項の中で、Berry曲率項はγ→0の近似式であるため説明できず、これとは対照的にFermi surface項が本質的役割を果たす。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の進展が遅れていたスピンホール効果における外因性機構に対して理論解析に成功し、その中のサイドジャンプ項と内因性項と間の非自明な関係性が明らかになった。この事に加えて、AC異常ホール効果に対して実験家との共同研究をさせて頂いている。DCではなく有限のωにおける振る舞いを通して発現機構の解明をする糸口になると考えられるため、本研究を通してCa_xSr_<1-x>RuO_3における異常ホール効果の起源の解明を試みた。結果的に、実験結果が内因性項で再現でき、内因性機構で説明できる事がわかった。
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今後の研究の推進方策 |
近年、Yb系における化合物を作成できるようになったので、これら重い電子系おける異常ホール効果が実験で測定する事ができるようになってきた。この系における異常ホール効果の理論的研究はFertらの外因性機構に限られていたが、これらの理論解析では実験を十分に説明できない等の問題があった。また、今までの理論解析は有効模型に基づく物のみで、重い電子系における現実的な模型に基づく理論解析はなされてない。そこで本研究では初めに現実的な模型を構築し、その模型に基づき内因性項を理論計算する。その結果と実験と比較する事で、重い電子系における異常ホール効果の発現機構に対する理解を試みる。
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