研究概要 |
本研究は、日本統治下台湾において、台湾の人々との個別具体的な出会いにより植民地支配への懐疑、自らの「キリスト教」像の捉え返しの契機を与えられたイングランド長老教会の宣教師ムーディ(Campbell N.Moody, 1865-1940,在台活動期間,1895-1924)の思想の特徴を解明し、在台イングランド長老教会宣教師と台湾の人々との関係性の有り様を明確化することを目的とする。2011年度の研究活動では、ムーディの社会的政治的言論及びキリスト教理解との接点の明確化、それらに対する彼の台湾人らとの個別具体的相互関係の影響の実証を優先した。 具体的には、台湾の抗日ゲリラを主人公とするムーディの著書『山小屋:フォルモサの物語』・(The Mountain Hut:A Tale of formosa, 1938)の重点的分析を行い、その成果を論文「日本統治下台湾におけるキリスト教と反植民地主義ナショナリズム-宣教文書『山小屋』(1938).に見る「苦しみ」と「愛国」の問題に着目して-」としてまとめた。この論文において、1930年代のムーディが日本統治下台湾を基盤にキリスト教の有り様を論じる中で、反植民地主義的立場に基づくナショナリズムへの共感的姿勢を示したことを捉えた。 また、ムーディによる300名以上の台湾人に関する個別具体的描写を分析し、彼が意識的にステレオタイプ的な目線を批判しつつキリスト教宣教の有り様を捉え返したことを明確化した。その成果は、第62回大会キリスト教史学会(聖学院大学、2011年9月16日)にて報告「日本植民地支配下台湾におけるキリスト教宣教-キャンベル・N・ムーディ(Campbell N.Moody,i865」1940)の宣教経験に着目して-」として発表し同タイトルの研究ノートを、キリスト教史学会『キリスト教史学』第66集(2012年)に掲載するための執筆依頼を受けた。 その他、2011年度7月には台湾、台南の長栄中学歴史資料館、台南神学院図書館、高雄の高雄市支化中心図書館にて宣教師ムーディの手稿をはじめとするイングランド長老教会及び台湾の長老教会に関する史資料の収集を行った。同時に、国立成功大学文学院華語中心にて、研究上史資料へのアクセスに欠かせない〓 南系台湾語及び北京語リテラシーめ強化を行った。
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