研究課題/領域番号 |
11J06843
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
星野 太 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
|
キーワード | 偽ロンギノス / 崇高 / 修辞学 / エドマンド・バーク / ミシェル・ドゥギー |
研究概要 |
本研究課題の初年度に当たる平成23年度は、当初の予定通り、近代的な意味における「崇高」概念の成立について研究調査を実施し、その成果を発表した。(1)まず、5月下旬にはハワイ大学で開催された国際会議「第10回東西哲学者会議」において、研究成果の発表をおこなった。同学会では、偽ロンギノスによる『崇高論』の読解を出発点として、修辞学における正義と正当化の問題についての発表をおこなった。(2)また、6月から7月までの約一ヶ月間、フィレンツェのパラッツォ・ルチェライにて催された古典文献学のワークショップ「Translating the Past」へ参加し、同地の周辺施設において個人調査および共同調査をおこなった。 本年度前半における上記の研究を踏まえ、表象文化論学会『表象』、国際美学会『Aesthetics』の両誌にそれぞれミシェル・ドゥギー、エドマンド・バークの崇高論についての論文を発表し、いずれも今年度内に受理された(上記の二点の論文は2012年4月に刊行予定)。その他、自身の研究において方法論上の先行研究に相当するダニエル・ヘラー=ローゼン(プリンストン大学)の著書(The Enemy of All, MIT Press, 2009)を雑誌『現代思想』に抄訳し、その解説に相当する論文を宮崎裕助(新潟大学)と共著で発表した。また、過去に査読付論文として発表した大杉栄の「生の哲学」に関する論文を、加筆修正のうえ『KAWADE 道の手帖 大杉栄』に寄稿した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究は、当初の研究計画通り、おおむね偽ロンギノスの『崇高論』の受容史研究に費やされた。とりわけ、フィレンツェにおける同書の写本の検討は事前の予想以上に実り多いものであり、この点において本研究は当初の計画以上に進展したと言うことができる。しかしその反面、当初の研究計画にあった18世紀フランスの受容史研究については、事前の想定以下の結果にとどまった。上記の二点を綜合し、本年度の研究は、おおむね順調な進展を見せたと言うことができる。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度以降も、引き続き海外での資料調査、およびその成果の継続的な発表をおこなっていく予定である。とりわけ次年度は当初の研究計画に従い、18世紀以降のドイツ、イタリアにおける『崇高論』の受窓史研究に専心する。この研究上の手続きに関して現在のところ大きな障害や問題点はないが、目下の主なフィールドである美学のみならず、哲学・思想史の分野に属する研究者との交流を今後いっそう重ねていくことを成果発表上の課題としたい。
|