研究課題/領域番号 |
11J06912
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
ダシルバ エルハトホムロ 東京外国語大学, 大学院・総合交際学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 人身売買 / 南蛮貿易 / 奴隷制度 / ポルトガル帝国 |
研究概要 |
これらの文献リサーチの結果、明らかになった点は、次の三点である。第一に、日本では「東人(あずまひと)」「蝦夷(えぞ)」「蝦夷(えみし)」「熊襲(くまそ)」「隼人(はやと)」などの言葉が、異民族という意味をもつものの、ヨーロッパや東南アジアのように「奴隷」という意味をもたないことがわかった。このような言葉のあり方は、日本列島という閉ざされた空間に形成された社会においては、異民族・異文化、あるいは見ず知らずの人間を奴隷にする習慣があまりなかったことを示しているのではないと推測されていることが判明した。第二に、日本における取引を通じてヒトを流通する制度、いわゆる人身売買は、売買の自由度、流通する地域の広さ、用途の多様性など流通性の度合いは一様ではないと分かった。その中に、もっとも注目すべきなのは、藤木久志著『雑兵たちの戦場中世の傭兵と奴隷狩り』が解明する雑兵たちによる奴隷狩りである。南蛮貿易が始まった1540年代よりかつてあった戦場における奴隷狩りという活動が大阪の陣までに続き、その中の捕虜たちがポルトガル人にも買われていたと言うことが推測されている。しかし、未だその事実関係を決定的に示す史料が発見されておらず、今後の調査対象とすることにした。また、藤木氏によって日本における奴隷制度の在り方は解明されたものの、その奴隷貿易がどのように行われていたかなどについてはいまだ不明点が多くあり、奴隷制度に関わる人身売買の有り様を明らかにする必要性を痛感した。第三に、日本人とポルトガル人の間で行われていた人身売買の対象となっていた人々を識別することができた:倭寇の被虜人、文禄・慶長の役の捕虜、戦国の戦場にて生捕りされた人びと。文献分析の結果で、このような捕虜らは日本の港町でポルトガル人に買われていたと推測ができ、その事実性を史料で確かめることが今後の課題であると認識した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本・欧米文献分析と日本地方資料調査が計画通り進んだものの、計画作成の時点で未知だった文献と資料を見いだした理由でこの事業はまだ続くことである。今年度中に長崎などの地方図書館で資料調査することにした。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は2月下旬、二週間長崎県立図書館と佐賀県立図書館で、6月から11月の間にはスペイン・ポルトガルで史料調査を行う予定である。そして今年中と来年にポルトガルで行われる三つの学会(2012年9月27~28日、同年11月16~17日、2013年5月8~10日)において口頭報告を行い、修士論文の成果と、その後行なっている研究成果と課題を発表し、ポルトガルの研究者による指導とアドバイスを受けたいと考えている。
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