研究課題/領域番号 |
11J06912
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
ダ シルバエハルトホムロ 東京外国語大学, 大学院・総合交際学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 人身売買 / 南蛮貿易 / 奴隷制度 / ポルトガル帝国 |
研究概要 |
昨年ヨーロッパにおいて5カ月半、リスボン・セビリヤ・マドリードで調査した結果、イエズス会に関する史料を大量に集めることができた。リスボンでは、見つけた商人たちの遺言書を始め、様々な形をとったアジア各地の紀行文からアジアの中だけではなくポルトガル本国でもポルトガル人社会におけるアジア人奴隷制度の多彩な面が見えてきた。スペイン・セビリア市の調査では、フィリピンだけではなく、アメリカ大陸のメキシコやペルーにも存在していたアジア人奴隷に関する史料を収集して分析し、アジア人奴隷に対するスペイン王室の対応や政治的姿勢を把握できた。マドリードでは、当該期在日イエズス会士たちの史料原本の存在が確認でき、在日本宣教師たちの奴隷制に対する日常の姿勢が見えてきた。 そしてマカオ市立文書館のサイトでは、マカオのミゼリコルディア(キリスト教徒組合)の記録が発見された。その史料には、当会に関する遺言書の記録があり、その中に合計71人の奴隷の名前が確認された。そのうち多数(43人)は出身地不明であるが、中国人が13人、日本人が2人、韓国人2人、その他は11人。これらの遺言記録では、多くの女性奴隷が結婚相手として育てられてきたことが確認できた。つまり、マカオ社会では奴隷がただの労働力としてではなく、本国から離れ、ポルトガル出身の結婚相手がほとんどいなかった商人たちの結婚相手として、商人家の存続の手段の一つでもあったと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヨーロッパで調査の結果、大量の史料を集めることができ、日本とポルトガルの関係だけではなく、アジアとヨーロッパの関係の中に奴隷制度や人身売買の様々な様子が見えてきて研究の視野がとても広がることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、マカオとポルトガルで今までの結果や仮説を口頭報告をして、現地の研究者の意見を参考にして分析や論文の方向を調整したいと思う。そして後期は、ポルトガル関係史料が未だ大量が保蔵されているインドやマカオの史料館で調査を行い、論文を書上げる予定である。
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