研究課題/領域番号 |
11J06913
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
三谷 塁一 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 前立腺がん / アンドロゲン受容体 / 低酸素 / HIF-1α / レスベラトロール |
研究概要 |
前立腺がんの進行には男性ホルモンであるアンドロゲンとその受容体であるアンドロゲン受容体(AR)の機能破綻が関与している。我が国で増加し続けている前立腺がんの死亡率は、アンドロゲン除去療法(去勢)後に発症する去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)の増加に起因する。申請者は、去勢後に発現が誘導される低酸素誘導因子(HIF)-1αとβ-cateninというタンパク質がARの転写活性化に関与していることを見出している。本年度の研究において、HIF-1αはサイトゾルでβ-cateninと結合し、β-cateninの核内移行を促進することを明らかにした。またHIF-1αのC末端部位とARのN末端ドメインが直接結合し、HIF-1αとβ-cateninはそれぞれARの異なる領域で結合することで協調的にARのN-C相互作用を亢進することを見出した。これらの結果は、HIF-1αが去勢後の低アンドロゲン濃度下におけるARシグナルの鍵因子であることを示している。つまりHIF-1αを分子標的とすることでCRPCを予防できる点で非常に意義のある結果である。さらにARの転写活性阻害物質としてスクリーニングで得られたレスベラトロールは、ARだけでなくHIF-1α、β-cateninのタンパク質レベルも減少することを見出した。CRPCにおいて、レスベラトロールは複数の因子(AR、HIF-1α、β-catenin)を抑制することから、現在の有効濃度よりもより低濃度でARシグナルを抑制できると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度に予定していた研究実施計画は順調に遂行でき、現在「低アンドロゲン濃度下におけるHIF-1αとβ-cateninによるARシグナル活性化機構」についての結果を論文投稿準備中である。また平成24年度の研究に使用するCRPC発症モデルマウスの作製も順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
CRPCの発症機構を培養細胞レベルで解析できたので、平成24年度はCRPCの発症機構にHIF-1αとβ-cateninが関与するかin vivoレベルで検証する。さらに、レスベラトロールを自由摂食させてCRPCの発症の予防、遅延を検討する。
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