研究課題/領域番号 |
11J06937
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
井坂 政裕 北海道大学, 大学院・理学院, 特別研究員(DC2)
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キーワード | ハイパー核 / ラムダハイパー核 / ストレンジネス / 原子核構造 |
研究概要 |
原子核にΛ粒子等の異種粒子(ハイペロン)が加わることで、原子核は構造変化(不純物効果)を起こすことが知られている。本研究の目的は、ハイペロンのもたらす不純物効果を理論的に明らかにし、不純物効果を通して原子核の構造・性質を解明することである。本年度は特にMgに着目をして研究を行った。24Mgは、三軸非対称変形をした原子核である可能性が示唆されている。また、これにΛ粒子が加わった25ΛMgハイパー核は、今後J-PARC実験により生成され、その詳細な構造が実験的にも明らかになるものと期待されている。 1. 25ΛMgにおける三軸非対称変形の変化 本研究では、25ΛMgに反対称化分子動力学(AMD)模型を適用し、基底回転帯と(三軸非対称変形が非常に重要な)Kπ=2+回転帯に着目し、その変化を調べた。その結果、Λ粒子が加わることでKπ=2+の励起エネルギーが高くなることを示した。これは、基底回転帯ではΛ粒子によって核の変形が小さくなるのに対して、Kπ=2+回転帯では変形がほとんど変化しないため、Λ粒子の束縛エネルギーに違いが現れたことが原因であると明らかにした。 2. 25ΛMgのΛ粒子にp軌道状態 三軸非対称変形をした原子核にp軌道のΛ粒子が加わると、p軌道の向きによってΛ粒子の束縛エネルギーが異なるため、励起スペクトルは軸対称変形をしたハイパー核とは異なるものと期待できる。そこでAMD模型を用いて25ΛMgのΛ粒子のp軌道状態を調べた。その結果、加わったΛ粒子のp軌道の向きによって、3種類のp軌道状態が作られることを理論的に明らかにした。これらの3状態を実験で観測することで、芯核24Mgが三軸非対称変形をしていることを実験により確かめることが可能である。このようにp軌道のΛ粒子が、芯核の三軸非対称変形を調べるためのプローブとなりうることを理論的に示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、課題A"Beハイパー同位体の系統的研究"と課題B"p-sdシェルΛハイパー核の構造研究"という2課題を設定した。本年度は、このうち課題Bについて、予定していた25ΛMgハイパー核の構造研究をほぼ終えて、成果を学会や誌上論文等で発表した。また課題Aでは、本研究で用いるHyperAMD模型を改良した上でBeハイパー核に適用し、その構造を調べることを予定していた。現在、HyperAMD模型を改良してΛ粒子のp軌道状態を記述することに成功し、Beハイパー同位体の構造研究をするべく計算を進めている段階である。課題Aに関しても、大がかりな計算が必要な段階はほぼ終了しており、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本年度に引き続き、これまで発展させてきたHyperAMD模型に基づいて、Beハイパー同位体およびCやMg等のp-sdシェルΛハイパー核の構造研究を進める。さらに、ハイパー核の生成断面積を求めることで、J-PARC実験等の理論的予言を行う予定である。 生成断面積を理論的に予言するためには、これまで行ってきた準位構造や準位間遷移確率等のハイパー核構造の理論的予言とは異なり、(ハイパー)核反応の知見とそれを取り扱う手法が不可欠である。そこで、今後はハイパー核反応理論の研究者と共同研究を行い、HyperAMD模型に基づいて生成断面積を求める手法の確立を目指す。さらに、ハイパー核実験の研究者とも共同研究を行い、J-PARC等でのハイパー核実験の理論的予言を行う予定である。
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