研究課題
脳の情報処理回路の実体である神経細胞ネットワークは、神経細胞が周囲の神経細胞に向かってケーブル状の構造(神経突起)を伸長させることで初めて形成される。すなわち神経突起の伸長メカニズムの解明は神経科学における重要な研究課題である。神経突起を伸長させるためには神経突起伸長部位への脂質膜の供給や接着因子の輸送が不可欠であることが近年報告され始めており、細胞内の物質輸送を司る小胞輸送という視点が今後の神経突起伸長研究において重要な切り口になってくると考えられる。我々はこの観点から、小胞輸送を司るRabタンパク質に着目し、神経突起の伸長に必須な新規小胞輸送因子としてRab35とその結合因子centaurinβ2を同定することにこれまで成功している(Traffic(2010)11:491-507)。しかし、肝心のRab35とcentaurinβ2が制御する小胞輸送の実体はいまだ明らかでない。そこで本研究課題では、Rab35-centaurinβ2複合体が神経突起伸長時に制御している小胞輸送の実体を明らかにすることで、小胞輸送という観点から神経突起伸長の新規メカニズムを解明することを目指している。本年度はまず、Rab35とcentaudnβ2の結合が実際に神経突起伸長に必須であることを確認した。さらに、Rab35がリサイクリングエンドソームに局在すること、Rab35はcentaurinβ2を同エンドソームへとリクルートすること、そしてリクルートされたcentaurinβ2がリサイクリングエンドソーム上のArf6を不活性化することを見出し、この一連の過程が神経突起の伸長に必須であることを明らかにした(J.cell Sci(2012)in press)。今後はこのArf6の不活性化を手がかりに、Rab35-centaurinβ2複合体が制御する小胞輸送の実体に迫りたい。
1: 当初の計画以上に進展している
申請時の研究計画(i)-(v)のうち、初年度において既に(i)、(ii)、(iv)の3つの研究計画を実施・達成することができた。また、予想外にもRabとArfという異なるタイプの低分子量Gタンパク質間のクロストークを発見できたことからも、研究は当初の計画以上に進展していると考えられる。
初年度の研究によってRab35とcentaurinβ2はArf6の不活性化を介して神経突起伸長を制御していることが明らかになったが、Arf6はカドヘリンやインテグリンといった接着因子の輸送に関与することが報告されている因子である。小胞輸送による接着因子のリモデリングは神経突起の伸長において重要な役割を果たすことが報告されていることから、今後はこれらの因子群に着目しその動態を解析することで、Rab35-centaurinβ2複合体が制御する小胞輸送に迫りたい。
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Cell Struct.Funct.
巻: VOL.36 ページ: 155-170
10.1247/csf.11001
J.Cell Sci.
巻: (掲載予定)
10.1242/jcs.098657
http://www.biology.tohoku.ac.jp/lab-www/fukuda_lab/home-ja.html