本研究で並行して進める2つのテーマである(1)最適な複素環の同定と(2)精密な活性配座の同定について以下順に示す。 (1)最適な複素環の同定 <内容> 複素環の導入位置の異なる標的化合物2種を設計・合成し、H3およびH4受容体における活性を評価した。その結果、両受容体においてある程度活性を維持する導入位置を見いだした。しかしH3受容体に3倍程度選択性が発現したのみであり、設計時に期待したH4選択性は発現しなかった。このため、この基本骨格において複素環の導入ではH4選択性の発現は難しいことが推測された。 <意義> この活性評価結果を用いて後述する両受容体モデルとのドッキングスタディを行なうことで既存のリガンドとの構造活性相関の関係を把握するための知見が深まった。 (2)『精密な活性配座の同定』 <内容> 前回のエナンチオマーであるbicyclo[3.1.0]hexane骨格を有する標的化合物2種の合成・活性評価を行なった。その結果、H3受容体に100倍以上の選択性を示す強力なアンタゴニストを見いだした。この選択性発現機序を考察する為、ホモロジーモデリングによりH3及びH4受容体モデルを構築した。筆者が合成してきたヒスタミン配座制限誘導体の構造活性相関の結果を用いてモデルを最適化した後に各化合物のドッキングスタディを行なった。その結果、各受容体の7番目の膜貫通領域にあるロイシン(H3)とグルタミン(H4)の違いが選択性発現に関わっているという知見を得た。 <意義> 当研究室で合成したヒスタミン配座制御誘導体のなかで最も高い受容体選択性を有する化合物を見いだした。また、本制御法をホモロジーモデルと組み合わせることでモデルの精密化を可能とし、次の化合物設計時に方向性を与える受容体モデルを構築したことは今後のヒスタミン受容体アンタゴニストの創製に大きな影響を与えうる。
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