研究課題/領域番号 |
11J07115
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
寺澤 祐高 東京大学, 大学院・数理科学研究科, 特別研究員(PD)
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キーワード | 非圧縮性粘性流体 / 非ニューロン流体 / 冪乗法則型流体 / 弱解 / リプシッツ切断 / 二層流体モデル / Diffuse Interface Model / Positive Operator |
研究概要 |
今年度は、冪乗法則型流体の方程式の二層流体問題のDiffuse Interface Modelに関して、二つの流体がその密度が同じでかつ同じ冪を持つ粘性法則に従う場合に弱解の構成を試みた。また、Positive Operatorに関連する、調和解析の研究を行った。前者の研究は、Helmut Abels氏とLars Diening氏との共同研究であり、本研究遂行のために、学術振興会特別研究員奨励費を使用して、ドイツへの渡航を5月から7月に及び11月から12月にかけて2回行った。同渡航では、レーゲンスブルク大学のHelmut Abels氏のもとに滞在したが、Lars Diening氏とも議論を行った。冪乗法則型流体とは、流体の粘性係数が流体の速度場の対称微分の大きさに依存して変わる流体であり、その法則が冪を用いて表されるため、冪乗法則型流体といわれる。冪乗法則型流体の例としては、高分子からなる流体があげられ、ジェルやコーンスターチが代表的な例である。冪が高い場合は、Ladyzhenskaya,J.LLions,Necas-Malek-Ruzickaなどの研究があり、冪が低い場合については、最近、Diening-Ruzicka-Wolf('10)により、弱解の構成がなされた。その仕事には、ソボレフ函数のリプシッツ切断と呼ばれる、ソボレフ函数をリプシッツ函数で適切に近似するという方法が必要になる。近似方程式の解をリプシッツ切断して、近似方程式にテストすることにより、必要な評価を得宇rが、リプシッツ切断を考える距離空間が、放物型距離を入れた空間で、その距離が解に依存して決まるパラメーターによって変わるようなものを考える必要がある点が、技術的に難しい点である。本研究では、その手法を二層流体のDiffuse Interface Modelに対して適用することによって、低い冪の場合に弱解の存在を示すことを目標にした。証明において困難な点は、近似方程式をどのように選ぶかに工夫を要する点とCapillary forceの効果を解のリプシッツ切断において考慮する必要がある点である。後者のPositive Operatorに関する研究は、調和解析の専門家である、田中仁氏との共同研究であり、一般のFiltrationを持つ測度空間でPositive Operatorの重み付き評価を行った。両研究については、近日中に、学術誌に投稿予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
冪乗法則型流体に関する研究として、二層流体モデルの弱解の構成に取り組んだ。当初の目的は、冪乗法則型流体の適切性の研究であったので、それは、順調に進展している。今後の課題としては、最大正則性を応用した、冪乗法則型流体の適切性の研究がある。それに関連して、調和解析とマルチンゲールの関係が重要であるが、その方面に関する研究についても、Positive operatorの研究を行った。最大正則性に関連して、特異積分作用素の有界性が重要となるが、その重み付き評価の研究に役立つと期待される。
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今後の研究の推進方策 |
冪乗法則型流体のDiffuse Interface Modelに関して、低い冪に関しての論文を近日中に投稿する。線形化方程式の最大正則性を用いた強解の構成を今後の目標にしたい。そのために、Bothe-Pruss('07)の冪乗法則型流体に関する論文の結果および4階の放物型方程式に関する最大正則性の結果が必要となると考えられる。また、調和解析に関する研究としては、最大正則性に関連する研究として、特異積分のマルチンゲール理論における対応物である、マルチンゲール変換の重み付き評価の最良定数に関して、研究を行いたい。また、それに関連して、時間方向に重みをつけたp乗可積分空間における放物型方程式の最大正則性の最良定数による評価に関して、マルチンゲール理論の手法を使って研究を行いたいと考えている。
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