研究課題/領域番号 |
11J07124
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
中島 進吾 北海道大学, 大学院・農学院, 特別研究員(DC2)
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キーワード | Cholecystokinin / カルシウム感知受容体 / 食品ペプチド / メタボリックシンドローム / 消化管ホルモン |
研究概要 |
メタボリック症候群は依然として増加しており、新たな予防対策が必要とされている。我々は、食欲抑制作用(抗肥満)を持つ消化管ホルモン"Cholecystokinin(CCK)"分泌を誘導する大豆由来β51-63ペプチドの構造的特徴から、カルシウム感知受容体{Calcium-sensing Receptor(CaSR)}がCCK産生細胞株においてβ51-63ペプチド受容体として機能すること、さらに、CaSRが多くの食品ペプチドに共通する受容体であることを見出した。 本研究は、食品ペプチドだけでなくカルシウムや各種栄養素認識機構との関連性について着目しており、これらの栄養素受容体の機能を明らかにすることで、メタボリック症候群と栄養素認識の関わりについて新たな知見を得ることを目的としている。本年度は、CaSRを標的とした抗肥満に有用な機能性ペプチドの探索、およびそれらのペプチドを用いた消化管(in vivo)でのCaSR機能解析を行った。 <CaSRアゴニストとなる食品ペプチドの構造活性相関解析> 種々のたんぱく質加水分解物から、各種クロマトグラフィーを用いて、活性ペプチドを分離したところ、新規活性ペプチドの単離・同定には至らなかったが、たんぱく質の種類によってCaSRを活性化するペプチドの分子量が異なることが明らかとなり、CaSRが、親和性の低い受容体として、さまざまなたんぱく質由来のペプチドに対応し、消化・吸収調節において重要な役割を発揮する可能性が示唆された。 <生理学的手法によるCaSR活性化ペプチドのin vivoでの評価> in vitroにおいて、CaSRを強く活性化することが明らかとなったβコングリシニン加水分解物(βconP)を用い、in vivoにおけるCaSRの食品ペプチド受容体としての機能について評価した。βconPは、CCKによる生理作用(胃排出遅延)を誘導し、その作用は、CaSRへの関与が低い肉加水分解物に比べて強いことが明らかとなった。これらの作用は、CCK受容体阻害により部分的に弱まり、カルシウム共存下では増強されたが、CaSRの関与を明らかにするために、CaSR阻害剤などを用いて検討する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
活性ペプチドの単離・同定には至らなかったが、さまざまなたんぱく質について活性本体を探索することで、CCK産生細胞におけるCaSRの特性が明らかとなり、重要な知見を得ることができた。これらのin vitroでの結果を、CCKの作用の一つである胃排出を検討することでin vivoへと発展させることができた。
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今後の研究の推進方策 |
メタボリック症候群とCaSRの関係を明らかにするため、食餌誘導性(高脂肪食摂取)肥満ラットを用いて、CCK産生細胞におけるCaSRの発現や、ペプチドへの感受性の変化について検討を行う。また、各種栄養素を認識する受容体やトランスポーターの発現を確認し、CaSRとの相関関係を評価する。肥満との関与が報告されている、カルシウム摂取の低下とCaSRの関係性を調べるため、低カルシウム食を摂取させたラットで、同様の評価を行う。CaSRが親和性の低い受容体であることから、特定のペプチドではなく、摂取させるたんぱく質量を増やすことで、CaSRの発現や、機能の変化を介して、肥満の予防に有用であるかどうかを検討する。
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