メタボリック症候群は依然として増加しており、新たな予防対策が必要とされている。Cholecystokinin(CCK)は、食欲抑制作用(抗肥満)を有する消化管ホルモンであり、CCK分泌を誘導する因子として、食品ペプチドが良く知られている。本研究では、食品ペプチド受容体として見出したカルシウム感知受容体{Calcium-sensing Receptor(CaSR)}の消化管における機能を明らかにすること、およびメタボリック症候群との関わりについて新たな知見を得ることを目的とした。 本年度は、正常ラットおよび高脂肪食を摂取させた食餌誘導性肥満ラットを用い、強制餌負荷試験における胃排出速度を測定することで、メタボリック症候群進行時の栄養素への応答を検討した。高脂肪食摂取開始から5週間後までは、正常ラットに比べて餌負荷後の胃排出の遅延が見られたが、肥満が進行するにつれて胃排出速度は逆に早くなり、肥満進行による栄養素に対する消化管応答の変化が明らかとなった。CCKと高脂肪食摂取による栄養素応答変化を解析するため、門脈血中のCCK濃度および腸管組織(胃、十二指腸、空腸、回腸、盲腸、結腸)における遺伝子発現(CaSR、CCK)を解析したところ、高脂肪食摂取によって血中CCK濃度に変化は見られず、空腸のCCK遺伝子発現が増加する傾向にあった。 以上、本年度の研究により、高脂肪食摂取による肥満誘導モデルラットにおいて、腸管での栄養素応答が変化することが明らかとなった。今後、肥満進行時において、どういった栄養素成分に対する応答が変化しているかを明らかにすることで、それらを標的とした、新たな肥満予防につながることが期待される。
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