研究課題/領域番号 |
11J07125
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
河部 剛史 東北大学, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 免疫寛容 / 自己免疫疾患 / 炎症性腸疾患 / MHCクラスII |
研究概要 |
末梢免疫寛容機構の解明は、基礎医学のみならず、自己免疫疾患や炎症性疾患、アレルギーへの関与など臨床医学においても極めて重要な課題であるが、未だにその全容は明らかになっていない。申請者はこれまでに、大腸上皮細胞など非血球系細胞が末梢免疫寛容に必須の役割を果たしているとの知見を得ていた。そこで平成23年度は、非血球系細胞によるMHCクラスIIを介する末梢T細胞制御機構を明らかにするため、MHCクラスII欠損マウスをレシピエントとした新生児胸腺摘出・野生型胸腺および骨髄移植実験を行った。実験系の有効性については、胸腺摘出マウスにおけるT細胞の消失、異種皮膚移植に対する拒絶反応の減弱、野生型胸腺移植後のTCRレパートリーの変化等を観察することにより確認した。当初の予想通り、移植された野生型胸腺(MHCクラスII+/+)よりCD4 T細胞が教育・生成され、移植後100日前後より末梢にてCD4T細胞が検出された。末梢CD4 T細胞はCD62L^<lo>CD44^<hi>の活性化フェノタイプを有していた。これらのマウスは腸炎、間質性肺炎、接触性皮膚炎など多彩な炎症性疾患を呈し、活動性の低下および体重の減少を伴いつつ、おおむね移植後200日までに死亡した。病理組織学的検討では、病変部及び所属リンパ節において著明なリンパ球浸潤を認めた。特に腸炎については、病変部においてTh17細胞を多く認め、IL-17Aの病態への関与が示唆された。以上の結果より、消化管、肺、皮膚など多彩な部位において、非血球系細胞がMHCクラスIIを介して末梢T細胞を制御しているとの可能性が示された。現在、消化管に焦点を絞り、上皮細胞や間葉系細胞などによるT細胞制御機構を探求している。本研究が完遂されれば、基礎医学のみならず炎症性腸疾患に対する新規治療法の開発など臨床医学に対しても重要な基盤技術をもたらすものと期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画の通り、胸腺摘出・胸腺移植・骨髄移植の実験系を完成させ、腸炎、間質性肺炎、皮膚炎など各種自己免疫疾患を誘導することに成功し、これにより消化管上皮細胞や腸間膜リンパ節間葉系細胞など腸炎の責任細胞の候補を絞り込むに至った。
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今後の研究の推進方策 |
現在作製中であるMHCクラスIIコンディショナルノックアウトマウスを完成させ、その自然経過を追うとともに、潰瘍性大腸炎モデルであるOX40リガンドトランスジェニックマウスのCD4T細胞を移入したり、経腸的に抗原を投与するなど、炎症性腸疾患発症下でのマウス個体の反応を観察する。消化管および腸間膜リンパ節におけるTh17および制御性T細胞の生成機構についても検討する。
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