研究課題
年度初頭において、これまで実験を行なっていた1個体に加え、新たな実験個体の行動訓練を開始した。一定の課題成績を達成後、強制選択および自由選択条件での遅延眼球運動課題を課し、行動データを取得した。行動データ記録は2011年11月までに終了した。解析の結果、現在の試行の自由選択に対し、先行する試行において行なった反応と選択がそれぞれ異なる影響を与えることが見出された。このような先行する反応と選択の異なる履歴効果は、複数の強制選択および自由選択条件の試行をランダムに織り交ぜて実施する本研究の課題構成により分離し得たものであり、自由選択行動の性質とその神経基盤を検討するうえで重要な知見であると考えられる。さらに本年度は、上述の新規個体について、単一ニューロン活動の記録も開始した。先に記録を開始していた1個体と併せ、現在、2個体からのデータ取得を行なっている。単一ニューロン活動の解析からは、自由選択条件における眼球運動方向の選択が、強制選択条件と同様、前頭連合野方向選択性細胞間における抑制的競合過程により行なわれている可能性が示唆された。また試行開始前における方向選択性ニューロンの活動強度には揺らぎが存在し、このときの偶然の活動レベルの強弱が、後続の試行における眼球運動方向の自由選択に影響を与えていることが示された。単一ニューロン活動に関する結果の一部は、2011年9月に行なわれた日本神経科学大会において発表した。これらの動物の行動および単一ニューロン活動記録に関する結果から、前頭連合野方向選択性ニューロンの活動が、眼球運動方向の自由選択において重要な役割を担っていることが示唆された。そこで、次年度以降、これらの観察事実をニューロン集団のレベルでより直接的に観察するため、本年度終盤には、神経細胞活動の波形データ記録のためのセットアップを行なった。これにより神経細胞集団に対する入力の総和であるLFPの記録・解析や、個々の神経細胞活動の波形解析に基づく細胞種同定が可能になると考えられる。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、申請書記載のとおり新規個体の神経活動の記録に着手し、行動データに関してはその記録を完了した。また神経細胞集団活動の検討のためLFP記録のシステムを導入し、次年度以降における実験計画のための準備を行なった。以上により、本研究における本年度の達成度は、予定通りおおむね順調といえる。
今後、本研究は、当初の研究計画の通り、神経活動データの収集を継続する予定である。また可能であればさらなる実験個体からのデータ取得を行ない、実験結果の信頼性の向上を図る。
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