本年度は、年間を通じて、行動課題遂行中のサル前頭連合野からの神経活動記録を継続した。2個体のサルにおける神経細胞活動収集により、前頭連合野方向選択性細胞が試行開始以前の時点で有している偶然の活動の強弱が、その後の試行において眼球運動方向の自由選択に与える影響がより顕著に確認された。またサンプルサイズの増加により、このような試行前活動の影響が刺激呈示にどの程度先んじて生じるかを統計的に精査することが可能となり、また細胞間の発火特性の比較から、自由選択行動にとくに強い影響を与える細胞群は、発火状態が持続的に維持されやすい性質をもつことが示唆された。こうした個々の細胞の発火傾向は、必然的にその細胞が属する局所皮質回路の活動特性を反映したものと考えられるため、この結果は、前頭連合野神経細胞が自由選択に為す役割を回路動態として理解するための重要な手がかりとなる。 このような単一細胞活動記録に加え、本年度は前年度より進めていたデータ記録システムの構築を完了し、局所電位(LFP)による細胞集団活動の記録も開始した。今後はこれにより得られた細胞集団の活動状態と、個々の細胞にみられた自由選択行動への影響がどのように関連しているかを検討していく予定である。 以上の実験の実施に加え、本年度前半では行動データの解析結果を2012年6月に行なわれたMotor Control研究会において発表し、学術論文としての投稿準備作業をおこなった。また神経細胞活動のデータについては、同年9月に行なわれた日本神経科学大会のポスター発表や、11月に行なわれた生理研研究会での講演により発表し、議論を行なった。
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