研究概要 |
線形化微分作用素に対する逆作用素のノルム評価法: 線形化微分作用素の可逆性の証明は偏微分方程式の精度保証付き数値計算において重要な役割を占めている.本研究では自己共役な線形化作用素に対して,楕円型作用素の実固有値を用いて可逆性が検証できる事を示した.そしてLaplacianに対する精度保証付き固有値評価をもとにした固有値評価を導出し,計算された固有値を利用するノルム評価方法を確立した.提案手法は先行研究に比べ検証が成功しやすく,よりタイトな評価を可能にする事が特徴である.さらに,これまでの任意多角形領域上における計算機援用証明法の技巧を用いることで,任意多角形領域に対応することができ,より実用的な逆作用素のノルム評価方法を提案することができた. 提案手法の反応拡散系数理モデルへの適応: 任意多角形領域上における計算機援用証明方法の応用例として,2つの未知関数(u,v)に関する反応拡散系の非線形連立偏微分方程式を考える.反応拡散方程式は主に化学,生物学,物理学などに表れる現象を記述した方程式である.本研究ではFitzHugh-Nagumo方程式と呼ばれる神経繊維上の電位の伝播モデルを考え,反応拡散方程式の定常解を任意多角形領域上で計算機援用解析できるようにした.これは昨年度提案したHyper-circle equationとNewton-Kantorovichの定理を基礎とする精度保証付き数値計算手法の自然な拡張である.適応にあたり,先行研究では成されていなかった作用素項が含まれる固有値問題に対する精度保証付き評価を提案するなど,既存の理論の応用だけではない新たな手法の発展が適用を可能にした.
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題による成果によって,有限要素法を用いた任意多角形領域における偏微分方程式の精度保証付き数値計算法はほぼ完成した.関連の研究課題について,今後は主に以下の2つの方針で研究を行う.(1)精度保証付き数値計算法を利用してパラメーターによって決定される偏微分方程式の解の構造を計算機援用証明する.(2)非線形放物型偏微分方程式の精度保証付き数値計算による解の存在証明へのアプローチ.(1)は陰関数の定理と解曲線の数値的連続追跡法の技巧を合わせて,数学問題の計算機を用いた証明を試みる.(2)について解析半群の有理関数近似を用いた全離散近似解の事前誤差評価を提案し,放物型問題への精度保証付き数値計算法を確立する.
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