研究概要 |
本研究では,細胞分裂期におけるリン酸化されたミオシンII調節軽鎖(MRLC)の機能の解明を目的とする. <研究1>各種変異型MRLCをHeLa細胞に発現させ,収縮環に局在するMRLCの機能解析を行い,以下の成果を得た.(1)収縮環の形成時にMRLCのリン酸化は,アクチンの集積に影響を与えないが,MRLC自体の赤道面への集積速度を上昇させた.またMRLCの集積は,そのリン酸化状態に関わらずアクチンに先行していた. (2)収縮環の収縮時にMRLCのリン酸化は,ミオシンIIとアクチンの両者のターンオーバー速度を低下させた, (3)EGFP融合各種MRLCアイソフォーム(MRLC1,MRLC2,MRLC3)は,いずれも収縮環に局在した. <研究2>Ser19がリン酸化されたMRLC(1P-MRLC)とさらにThr18もリン酸化されたMRLC(2P-MRLC)に,分裂期において機能に違いがあるかどうか,後者に特異的なモノクローナル抗体(4F12)を用いて様々な検討を行い,以下の成果を得た. (4)4F12を用いて哺乳類培養細胞を免疫染色した所,HeLa細胞をはじめとし,検討したいずれの細胞(COS-7,NIH-3T3,NRK,MDCK)においても,ミッドゾーン(収縮環の内部領域)が染色された. (5)上記の細胞では,ミオシン重鎖や1P-MRLC,アクチン繊維がミッドゾーンに局在する様子は観察されなかった. 以上の事実は,2P-MRLCがミオシンII分子のサブユニット以外の機能を有するという予想外の可能性を示唆する点で興味深い.更に,以下の点も明らかにした. (6)2P-MRLCとAurora Bは,互いに直接結合した。 (7)Hesperadin(Aurora B阻害剤)を細胞に作用させると,2P-MRLCのミッドゾーンへの局在が阻害されると共に,分裂終期のアブシージョンの阻害が観察された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者は,ミオシン重鎖の局在しないミッドゾーンに,2P-MRLCが局在するという事実を明らかにした.この事は,2P-MRLCがミオシン分子のサブユニット以外の機能を有するという予想外の可能性を初めて示した点で重要である.また,2P-MRLCはAurora Bと直接的な結合をする事も初めて明らかにした.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,2P-MRLCに結合する因子の網羅的同定をする計画であった.しかし,免疫沈降に使用するオリジナルのモノクローナル抗体の力価の低下が見られ,再現性のある結果を得る事が難しいと判断し,現在まで実施を見送っている.その対応策として,現在,当該のモノクローナル抗体産生ハイブリドーマをマウスに移植し,再び抗体を作製している最中である.それが完了し次第,直ちに当初の計画を実施する予定である.その他の計画については,予定通りに進行する見込みである.
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