研究課題
チトクロムc酸化酵素(CcO)はミトコンドリア呼吸鎖の末端酸化酵素であり、分子状酸素(O_2)の還元反応と共役したプロトンポンプを行う。CcOは、真核生物ではミトコンドリア内膜に、好気性細菌では細胞膜に存在し、膜を介した電気化学ポテンシャルを形成する事でATPの合成を駆動する。CcOの活性中心であるヘムaは、プロトンポンプの駆動部位として機能するが、共鳴ラマンスペクトルではヘムの振動モードを選択的に共鳴増大し、その構造情報を得る。本研究では、プロトンポンプと連動して構造変化すると推測されている、ヘムaの側鎖7位プロピオン酸基とヒドロキシファルネシルエチル基に由来する振動モードの帰属決定を行い、プロトンポンプに伴った構造変化を検出する事を目的とした。そして細菌CcOの変異型酵素を調製し、その共鳴ラマンスペクトルを解析する事で、364cm^<-1>と1251cm^<-1>にそれぞれ7位プロピオン酸基とヒドロキシファルネシルエチル基に由来する振動モードを帰属した。また、ヘムヨが駆動するプロトンポンプ機構は哺乳類(ウシ心筋)酵素において提案されているので、細菌CcOの帰属を基に、ウシ心筋CcOの共鳴ラマンスペクトルを解析し、7位プロピオン酸基とヒドロキシファルネシルエチル基に由来する振動モードを370cm^<-1>と1251cm^<-1>に帰属した。そして酵素反応追跡用人工心肺装置を用いて、CcOのO_2還元反応の時間分解共鳴ラマンスペクトルを測定した。この時間分解測定は条件検討の段階である。これまで、プロトンポンプに伴うヘムやタンパク質の構造変化が、実時間で検出された報告は無かった。本研究で帰属したヘムa側鎖の振動モードはプロトンポンプに伴う構造変化を反映するため、時間分解測定のマーカーバンドとしての利用が期待される点で意義があり、動的プロトンポンプ機構解明のための基礎を与える点で重要である。
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