研究概要 |
世界の人口増加に伴い、米の消費量も年々増加し続けており、生産量を増加する必要がある。アジア・アフリカなど熱帯地域の栽培イネ品種の生産性向上には、収量構成要素(穂数、籾重、1穂当たり籾数)に関する遺伝子の育種的改良が不可欠である。本研究では、熱帯地域で栽培されているインド型品種において籾数を増加する遺伝子の特定とその育種的利用を目指している。 期間内に行う研究内容は、大きく区分すると以下の3つになる。(1)高精度連鎖解析を行い、籾数が増加する遺伝子(qTSN4)の分子機構を検証する。(2)次に、qTSN4を識別するDNAマーカーを作出する。(3)さらに、熱帯アジア・アフリカ地域の普及品種へqTSN4を導入する。(1)に関しては、7996個体の分離集団を用いて、qTSN4の高精度連鎖地図を作出し、STSマーカーind8M17-4とind8M17-12の間、約18kbpの領域にqTSN4が座乗することを明らかにした。また、日本晴の塩基配列においてqTSN4の候補領域内に3つの遺伝子が予測されていた。候補遺伝子が絞れたことにより、形質転換体の作出を進めることが可能となった。(2)に関しては、在来品種150系統を栽培し、各系統のDNAを抽出するため、葉をサンプリングし、凍結乾燥した。qTSN4は、葉身幅にも関与していることから、籾数よりも遺伝率が高い形質である葉身幅を測定する予定である。(3)に関しては、インドネシアの普及品種Ciherang,ラオスのTDK1,フィリピンのPSBRc18,バングラデッシュのBR11,インドのSwarnaにqTSN4を導入する交雑をしBC1F1を作出した。BC1F1集団において、qTSN4と密接に連鎖するSSRマーカーを用いて、目的のQTL領域を持つ個体を選抜した。東アフリカの普及品種SUPAに関しては、種子の入手が遅れた為、現在F1個体を栽培している。
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