研究課題/領域番号 |
11J07274
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
藤田 大輔 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 作物研究所・稲研究領域, 特別研究員(PD)
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キーワード | イネ / 多収性 / インド型品種 / 熱帯ジャポニカ / 籾数 / 高精度連鎖解析 / マーカー選抜 / 育種的利用 |
研究概要 |
世界の人口増加に伴い、米の消費量も年々増加し続けており、生産量を増加する必要がある。アジア・アフリカなど熱帯地域の栽培イネ品種の生産量増加には、収量構成要素(穂数、籾重、1穂当たり籾数)に関する遺伝子の育種的改良が不可欠である。本研究では、熱帯地域で栽培されているインド型品種において籾数を増加する遺伝子の特定とその育種的利用を目指している。期間内に行う研究内容は、大きく区分すると以下の3つの内容である。(1)高精度連鎖解析を行い、籾数が増加する遺伝子(qTSN4)の分子機構を検証する。(2)次に、qTSN4を識別するDNAマーカーを作出する。(3)さらに、熱帯アジア・アフリカ地域で普及品種へqTSN4を導入する。 (1)の研究内容に関しては、昨年度の研究成果において、作出した高精度連鎖地図において、qTSN4の候補領域内に3つの遺伝子が予測されていた。発現解析の結果、3つの遺伝子のうち1つがイネの幼穂において発現しており、この遺伝子がqTSN4の候補遺伝子として考えられた。この候補遺伝子を過剰発現した形質転換体を作出し、籾数が増加する効果を確認した。また、microRNAにより遺伝子発現を抑制した形質転換体を作成し表現型を調査したところ、qTSN4を保有する系統(NIL-qTSN4)に比べて、明らかに籾数が減少し止葉幅が狭くなった。(2)の研究内容に関しては、在来品種130系統を栽培しDNAを抽出し、作成したDNAマーカーを用いて遺伝子型の調査を行った。(3)の研究内容に関しては、インドネシアの普及品種Ciherang、ラオスの普及品種TDK1、フィリピンの普及品種PSBRc18、バングラデッシュの普及品種BR11、インドの普及品種SwamaにqTSN4を導入するマーカー選抜育種を行っている。これらの品種とqTSN4の準同質遺伝子系統を交雑し、BC3F1集団を育成した。各世代において、DNAマーカーにより、qTSN4の領域が導入された個体を選抜した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の計画において重要な点は、候補遺伝子を導入した形質転換体作出・評価とアジア・アフリカ地域の普及品種へqTSV4を導入する交配であった。籾数に関する遺伝子の特定・検証は、その後の全体的な実験の進捗に関わる。また、材料育成の為の交配が失敗した場合は、半年ほど育成が遅れてしまう可能性があった。これらの研究内容が、ほぼ計画どおりに進んだことから、「おおむね順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
qTSN4の籾数増加に関する分子機構を解明する為に、マイクロアレイにより発現解析を行う。熱帯の環境下において、遺伝子の効果が確認できている為、フィリピンにある国際稲研究所で実験をする必要がある。qTSN4を特定するマーカーの作出に関しては、塩基配列を解読し、変異のある部位を認識するPCRマーカーを作出する予定である。アジア・アフリカ地域の普及品種にqTSV4を導入した系統を作出するために、BC_3F_1集団において、100個以上のSSRマーカーにより遺伝的背景を調査し系統を選抜する。その後、異なる遺伝的背景でのqTSV4の効果を検証する。
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