研究課題/領域番号 |
11J07287
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
伊藤 亮介 広島大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 活動銀河核 / ジェット / フェルミ衛生 / かなた望遠鏡 / 赤外線検出器 |
研究概要 |
ブレーザーとはジェットを伴う活動銀河の中でも、特に、そのジェットを正面から観測している天体である。しかし、その放射の元となる電子の加速機構やジェットの構造はよく知られていない。これらを明らかにするためには、両放射成分の時間発展を精度よく調べる必要がある。私はガンマ線衛星フェルミと東広島天文台かなた望遠鏡による多波長同時観測により、ブレーザーの放射メカニズム、特に高エネルギー放射の起源を探ることを目指している。今年度は、ブレーザー天体3C66Aの多波長同時観測結果について解析を進め、この天体における高エネルギー放射起源を探った。解析の結果、3C66Aにおいては、その高エネルギー放射起源が従来考えられてきた1つの放射領域からではなく、2つ以上の放射領域からの放射が重なって観測されているという示唆が得られた。従来から考えられてきた放射モデルのあり方に一石を投じるものであり、インパクトは非常に大きい。これらの結果はフェルミ衛星チームのミーティング、日本物理学会や日本天文学会において度重なる議論を重ねており、結果はほぼ固まりつつある。論文についてもほぼ執筆は完了しており、間もなく投稿できる段階にある。また、ブレーザー天体Mrk421においても同様に多波長同時観測の解析を進めている。この天体においては、高エネルギー帯域でのフレアを受け、即座にかなた望遠鏡でのフォローアップ観測を実施し、非常に密な多波長同時観測データを得た。解析の結果、高エネルギー帯域で活発な時期と静穏期では、可視偏光の振る舞いに差異があることを発見した。これは、ブレーザーからの放射メカニズムを探るうえで大きな足掛かりとなることが期待される.偏光の差異は日本天文学会にて報告するとともに、変動メカニズムの議論を進めている最中である。結果は論文に執筆中であり、近く投稿する予定である。また、より幅広い帯域での観測をめざし、新しい赤外線検出器の試験を行ってきた。試験の結果、天体観測に必要不可欠である低温下~90K)において、素子が正常に駆動できることを確認し、新たな検出器開発への足掛かりを得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
フェルミ衛星とかなた望遠鏡によるガンマ線・可視分光・偏光モニター観測は実施されているが、かなた望遠鏡運用チームからの要請で他の突発天体に時間が配分され、当初予定していたよりもブレーザー天体の観測時間が削減されてしまっている。加えて、可視・赤外線同時観測の装置の開発が遅れ、十分な数の天体をモニターできていないこともあり、計画は遅れ気味である。
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今後の研究の推進方策 |
速やかに次期可視・赤外線同時観測装置の開発を進めるとともに、同時モニター観測を継続する。観測をより効率化するために、完全自動観測プログラムを作成しているところである。通常観測のためのロボット化は、ぼぼ完成しており、試験的な運用を開始したところである。今後、より精度の高く効率的な観測をめざし改良を続ける方針である。また観測結果を即時解析し、報告する体制も強化していき、同時観測で研究テーマに沿った興味深い天体現象が起これば即座に報告・論文化を進める方針である。
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