研究概要 |
本研究は幹細胞を酸素濃度勾配下に暴露するデバイスを構築したうえで幹細胞の分化誘導の様子を観察し,酸素に関し更に詳細な幹細胞分化の知見を得ることを目的とするものである.生体内では幹細胞,癌細胞ともに常に酸素濃度勾配下にさらされている.しかしながら,現在の細胞実験系では,一定状態のある酸素濃度における細胞反応を観察している.そこで本研究では,マイクロ加工技術を用いて1chamber内で酸素濃度勾配を形成し,そのうえで細胞を培養することで酸素勾配(いわば酸素濃度における微分成分)による細胞反応の様子を観察する.その中で本研究では特に幹細胞分化における影響を検討することとした. 本年度における研究実施計画では(1)デバイスの基本設計,(2)酸素濃度勾配の基本設計,(3)シミュレーションとの対比,MSC(間葉系幹細胞)の基本培養と導入が当初の計画であった.実際の研究進行も,当初の計画通りであった.現在までに,マイクロ加工技術の確立,酸素濃度勾配マイクロデバイスの構築,実際の酸素分圧計測(早稲田大学合田研究室と共同),シミュレーションとの対比,さらにHela細胞を用いて実際に低酸素応答しているかどうかをpimonidasoleを用いて検討した.その結果,酸素濃度に応じたpimonidasoleの免疫蛍光のグラデーションが形成されていた.現在は,骨髄由来間葉系幹細胞(MSC)を用いて低酸素で増加すると考えられる軟骨細胞の分化方法及び評価手法に関して検討している.以上のよう,申請書に記載した実験計画書通りに研究が進行している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書における実験計画通りに進んでいる.しかしながら,新しい職場ということあり,加工方法の再検討,実験装置の使用に対する許諾及び使用方法の確立など予想以上に立ち上げに時間がかかってしまっており,来年度はさらに実験を加速させて,成果を上げたい.
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今後の研究の推進方策 |
申請書通りに分化誘導と,その際に酸素濃度との対比,単離方法の確立とアレイ化,生化学分析を行う.しかしながら、分化誘導の確立を行うことと並行してアレイ化を先に行う.幹細胞の分化誘導にはおよそ2週間~3週間必要である.そのため,実験を加速させるアレイ化の開発を先に行う必要がある.
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