本年度は、昨年度に引き続き、地形のパターン形成やダイナミクスに見られるメカニズムを、i)現象の細部に至る詳細な性質を明らかにする粒子法シミュレーションと、ii)現象を粗視化し本質の抽出を行う現象論モデルの構築と数理解析の2つの異なるアプローチを用い考察する目的で、以下の通り実施した。 1砂丘 : 砂丘骨格模型と呼ばれる力学系モデルを用い、環境条件に応じたバルハンの安定性に着目した。その結果、バルハンの最終状態は砂の供給量の増加に伴い、消滅・定常・増加の異なる3種類に分類された。そして、(i)孤立系の場合、バルハンは消滅と増加の2状態をほぼ示し、形成された定常バルハンのサイズは供給量によらず一定となった。一方で、(ii)ネットワーク系の場合、バルハンは供給量に応じた異なるサイズへ変形した。さらに、線形安定性解析を通して、これらの変形は最適サイズへの自己調節機能によって生じた事が分かった。 2雪崩 : 粒子モデルと現実の系との定量的対応を議論するため、斜面流前端に形成される頭部の前端角の時間発展に着目した。その結果、数値計算の初期において、前端角が示す揺らぎは大きいが、時間の経過とともに前端角は一定の角度(60度)へ収束することが分かった。この角度は、雪崩に関する運動論の理論解析から予測されており、本モデルの結果と良く一致した。また、本モデルを支配する1つの無次元パラメータを変化させることで、頭部形状が一定値を境に形成されなくなった。具体的には、重力が斥力に比べ十分大きい場合、頭部を形成することは不可能であり、モデルの適用範囲を意味すると考えられる。 3リップル : 粒子の詳細な跳躍過程を捉えるため、スプラッシュ(砂面への粒子衝突により他の粒子を放出する過程)における粒子の物理的状態を調べた。その結果、粒子の砂面への入射角度分布は、2つの異なるガウス分布によって上手くフィッティングされた。さらに、入射時の粒子の運動エネルギーは、高エネルギーと低エネルギーの2状態に区分された事から、2種類の跳躍モードの存在が示唆された。
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