研究課題/領域番号 |
11J07301
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中園 智晶 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | Cell assembly / Multi unit recording / Hippocampus / Rat |
研究概要 |
本研究の目的は、高次な情報処理仮定に関与しているとされる神経細胞集団に注目して、脳内の神経細胞において情報がどのようなダイナミクスで処理されているかを考察することであった。そのために、独自に考案した行動課題である二重情報課題を実行中のラットのニューロン活動の電気生理的記録と、BMI技術を用いたニューラル・オペラントによる実験の二つをその研究計画の柱としていた。研究実施計画において、本年度はこれまでに開発した行動課題実行中のラット海馬からニューロン活動を記録する実験を予定していたが、電気生理実験を前に行動データをより詳細に分析したところ、本来の研究目的に沿わない行動結果であることが判明した。より細かい条件ごとに着目しての解析を怠っていたため、ラットがこちらの狙いのように異なる情報を使い分けて正答を得るという方法ではなく、同時に二つの情報を処理・保持してこちらの設定する条件どちらにでも対応できるようにするという抜け道的な方策をとっていることに気づけなかった。この失敗の原因には、そもそもの行動パラダイムが厳密でなかったことと、データ分析の不十分さという二点の原因があったと考えられる。これまで使用してきた二重情報パラダイムは不完全で研究に不適なものであったと結論せざるを得ない。そのため、これまでの実験はいったん全て破棄し、現在は行動パラダイムを見直して本来の目的に沿った実験計画を再考し、ラットに実際に訓練を行いその有効性を検証している段階であるため、本報告書において記載すべき研究成果・実績は未だ何も得られていない。また、次年度以降に実施を予定していたBMIをもちいた実験のためのリアルタイム・スパイク・ソーティングシステムのセットアップも今年度中に実施する予定であったが、上記のトラブルもあり未だ中途である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究実施計画においては今年度はこれまでの行動実験のデータを踏まえて電気生理実験を行う予定であったが、行動データの再検討の結果、使用を予定していた行動パラダイム(二重情報課題)が本研究の目的に沿わないものであることが判明した。そのため電気生理実験を行うことは出来ず、再び行動パラダイムを検討し考案している状態であり、残念ながら研究の進行は遅れていると言わざるを得ない。
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今後の研究の推進方策 |
二重情報課題にかわる行動パラダイムとして「遅延見本合わせ課題」「ルールスイッチング課題」の二つを行動課題として検討中である。後者のルールスイッチング課題は従来では主に実行機能の指標として用いられてきたものだが、今回はそれを改良し記憶課題としての性質を付与しようとしている。この試みが成功するならば、「実行機能に関与した記憶表象」という新たな側面からニューロン活動を考察でき、またこれまでの計算モデルと照らし合わせた考察も可能になるのではと期待される。早期に行動計画を再整理し、電気生理実験に移行することを目指す。
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