研究課題/領域番号 |
11J07324
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
梶 さやか 関西学院大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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キーワード | リトアニア / ポーランド / ベラルーシ / ロシア / 史学史 / ナショナル=ヒストリー / 近代史 |
研究概要 |
平成23年度は、リトアニアやベラルーシの歴史学、ならびにそれに先立って成立したポーランドとロシアの歴史学によるリトアニア大公国の歴史的評価について、19世紀を中心に研究を行った。重点を置いたのは、19世紀前半のロシア領旧ポーランド=リトアニア地域において文化・学問・教育の中心であったヴィルノ(ヴィリニュス)大学における歴史学である。同大学からはポーランド史学の父と呼ばれたJ.レレヴェルが輩出したほか、後のリトアニアのナショナル=ヒストリーの原型となる歴史叙述も誕生し、その重要性が指摘できる。同大学の知識人が抱いたリトアニア観において重要な位置を占めるリトアニア史認識について、自らの従来の研究にポーランド本土等における古代史研究の動向を補って英語論文を発表した(近刊予定)。また、19世紀前半のヴィルノ大学でリトアニア史研究を牽引した人物に焦点を当てて、ロシアや他のヨーロッパ諸国などとの研究・史料上の影響関係などを検討した。これにより、19世紀前半におけるリトアニア大公国についてのポーランドとロシアの歴史研究の相互関係とそれらが後にリトアニアやベラルーシのナショナル=ヒストリーに与えた影響について明らかにしつつある(論文を準備中)。 また、ポーランド、ベラルーシ、リトアニアへ資料調査に赴いて日本国内では入手できない文献を収集し、19世紀前半のヴィルノ大学における歴史学研究に関する手稿史料を参照した。また、ベラルーシの歴史博物館の展示や一般向けの歴史書などから現代ベラルーシにおけるリトアニア大公国の位置づけや評価の一端、歴史認識一般をうかがうことができた。あわせて、同国の歴史学研究者にインタヴューを行い、現在のベラルーシにおける研究動向について「親ロシア」史学と「ベラルーシ=ナショナル」な史学の併存状況に関する知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
19世紀ロシアの歴史学におけるリトアニア大公国の評価に関して検討し残しているものがあるものの、次年度以降に予定していた現代ベラルーシの歴史研究や歴史認識、その中でのリトアニア大公国の位置づけなどの問題については前倒しで行うことができたため。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに検討してきた、19世紀におけるリトアニア大公国についてのポーランドとロシアの歴史研究の相互関係と、後のリトアニアやベラルーシのナショナル=ヒストリーへの影響について論文にまとめる(あるいは学会発表を行う)。そのうえで、19世紀後半から現在にかけてのリトアニアとベラルーシにおけるリトアニア大公国の自国史への位置づけ方を考察する。その際にはこれまでに検討してきた、現代ベラルーシの歴史研究や歴史認識、その中でのリトアニア大公国の位置づけなどを参考にしながら、さらに資料の収集や分析を行う。
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