研究課題/領域番号 |
11J07342
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
河岸 文希 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 有機合成 |
研究概要 |
市販の3-メチルカテコールより8段階にて調整可能な文献既知の芳香族アルデヒドを2段階にて対応する臭化ベンジル誘導体へと導いた。この臭化ベンジル誘導体を用いた不斉アルキル化はオルト位に存在するヨウ素原子の立体障害により困難が予想されたが、京都大学の丸岡らにより開発された不斉相間移動触媒を用いることで円滑に進行し、目的のアミノ酸誘導体を定量的、かつ高い光学純度にて合成することに成功した。窒素原子をメチルカーバメートとして保護した後に別途グルタミン酸より7段階にて調製したアミンとの縮合を行った。得られたアミドは再結晶により精製することで、目的物を単一のジアステレオマーを得ることに成功した。続く酸性処理により得られたエナミドをHeck反応の条件に付したところ、添加剤としてテトラブチルアンモニウムクロリドを用いることで反応は円滑に進行し、目的のビシクロ[3.3.1]骨格の構築に成功した。得られたエナミドを、酸性条件下、より立体障害の少ないα面より選択的に還元することで、C環上に存在する3つの不斉炭素の構築に成功した。塩基性条件下にて一級水酸基のアセチル基を除去した後にSwern酸化を行ったところ、生じたアルデヒドに対する窒素原子からの環化が進行し、5員環のヘミアミナールが得られた。得られたヘミアミナールからの脱水反応の検討は困難を要したが、トルエン還流下にて触媒量のカンファースルホン酸を作用させることで脱水反応が進行し、中程度の収率ではあるが分子間Heck反応の前駆体である5員環エナミドの構築を達成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
不斉相間移動触媒を用いた効率的な非天然型アミノ酸の調製法を確立し、更に当初の計画通りに分子内Heck反応によるビシクロ[3.3.1]骨格、および不安定だと予想された5員環エナミドの構築を行うことができたから。
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今後の研究の推進方策 |
ビシクロ[3.3.1]骨格を有するエナミドの合成法を確立できたので、引き続き天然物の全合成に向けた検討を行っていく。すなわち修士の際に見いだしたジアゾニウム塩とエナミドとのHeck反応を本基質に適応することでA環ユニットの導入を行い、二重結合の酸化的開裂を行うことでB環の構築を目指す。また、平行してエナミド合成法の短行程化、効率化を検討していく。
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