研究課題/領域番号 |
11J07347
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
斉藤 新也 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | X線天文学 / 高エネルギー宇宙物理 / 半導体検出器 / 赤方偏移 |
研究概要 |
特別研究員採用第二年度目の成果として、ロケット実験FOXSIの実施とFemiガンマ線衛星を用いた活動銀河核の解析の2点について報告する。 太陽から放出される硬X線の集光撮像および分光観測を目指すロケット実験FOXSI(Focusing Optics X-ray Solar Imager)に、私は初期の段階から参加し、焦点面検出器であるシリコンストリップ検出器の開発と性能評価を担当してきた。打ち上げを2012年11月に控えたFOXSI実験の準備のため、私は直前の期間を米国ホワイトサンズミサイル実験場に滞在し、検出器のキャリブレーションに携わるとともに、振動試験・テレメトリ試験・アライメント試験などを始めとする各種試験の準備を行った。ロケットは打ち上げられ、世界で初めて太陽からの硬X線放射を集光撮像観測することに成功した。さらに1Hz以下のきわめて低いバックグラウンドレートを実現しつつ、5分間ほどの観測時間内に数千の太陽硬X線光子を検出し、これまで開発を進めて来た焦点面検出器の宇宙観測における性能を実証した。 一方で、ガンマ線観測衛星Femiのデータ解析を行った。活動銀河核のなかでも中心領域から放出されるジェットが地球方向を向いた"ブレーザー"と呼ばれる種族の天体のGeVガンマ線での明るさの時間変動に着目して解析を行い、1時間程度の時間スケールでジェットの明るさが急激に変動していることを発見した。これは、GeV帯域における活動銀河核からの放射としては、これまで見つかっている中で最も短い時間変動スケールであり、ジェットの放射領域の位置や大きさに重要な制限を課す結果である。この結果を論文にまとめてAstrophysical Journalに投稿し、査読を経て受理、出版された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ロケット実験FOXSIを成功させ太陽硬X線を世界で初めて集光撮像したことで、本研究の目的の一つである「シリコンストリップ検出器の宇宙観測における性能実証」を成し遂げたことになり、その意義はきわめて大きい。さらにFermi衛星のデータ解析により、活動銀河核に付随する非熱的現象に関して新たな示唆を得た。以上を鑑みて、本研究が順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今後は研究課題の目的にある非熱的宇宙の理解にむけて、より詳細にFermi衛星のデータを解析する。とくに巨大ブラックホールへの物質の降着、エネルギーの解放のエネルギー収支に焦点をあてて、系統的なデータ解析を行う。
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