研究概要 |
不揮発性を有する磁気トンネル接合(MTJ)は、デバイス応用することで低消費電力化が期待されている。デバイス応用に向け、低書き込み電流(I_<CO>)、高熱安定性(Δ)等が求められる。 本研究では高Δが期待される垂直磁気異方性電極を用いたMTJ(垂直MTJ)の設計指針の明確化を目的としている。書き込み電流密度J_<CO>(∝I_<CO>)はダンピング定数α,記録層の実効磁気異方性磁場H_K^<eff>(∝Δ),参照層からの漏れ磁場H_<str>,というパラメータを用いて一般的にJ_<CO>∝α(H_K^<eff>+H_<str>)と表され、この式が設計指針とされている。前年度はこれらのパラメータを素子レベルで評価できる強磁性共鳴(FMR)のホモダイン検出法(ホモダインFMR)に注目し、素子加工プロセスを構築し、測定系を立ち上げた。しかし、垂直MTJにおいて周波数掃引型FMRの解析事例が無く、精度の良い解析には至らなかった。そこで本年度は(1):ホモダインFMRを用いた有効磁気異方性磁場とダンピング定数の評価法の確立、(2):高Aを有する垂直MTJ材料の開発、(3):(2)で作製したMTJを(1)の測定・解析手法により評価、垂直MTJに関する知見を蓄積し、設計指針を得ることを目的として、研究を開始した。COFeB/MgO垂直MTJのFMR測定結果について解析方法確立後、H_K^<eff>とH_<str>の素子サイズ依存性を調べ、微細化とともにこれらの値が増加すること、H_K^<eff>の増加は反磁場の変化により説明できることを示した。また、微細化に伴うH_K^<eff>の増加により、J_<CO>が増加することを明らかにした。さらにホモダインFMRの結果から見積もられるα,H_K^<eff>,H_<K2>,H_<str>を用いたJ_<CO>の理論値と実験値の比較をし、J_<CO>のサイズ依存性に電界効果を考慮する必要があることを明らかにした。(2)(3)に関しても同グループで並行開発された材料系も含め開発・解析を進めている。
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