研究概要 |
私達は近年、フッ化物イオンによるリン酸オクタカルシウム(OCP)の細胞反応性の向上を目的として、2種類のF含有リン酸カルシウム(F-CaP)の開発に取り組んできた。昨年度は、RCaPの合成方法の違いが骨芽細胞増殖・分化に与える影響について比較検討した。マウス骨髄由来間質細胞株ST2培養により、各F-CaPコーティング上における細胞増殖とアルカリフォスファターゼ(ALP)活性を評価した。その結果、共沈法にて作製したF-CaP(CF-CaP)は加水分解法にて作製したF-CaP(HA-CaP)に比べ早期に増殖し、ALP活性の上昇が認められた。 今年度は、CF-CaPのin vivoにおける骨形成能を明らかにするため、まず、CaPとPLGA(乳酸グリコール酸共重合体)の複合化を行った。ラットの頭蓋冠に臨界骨欠損を作製し、PLGAディスクとCaPIPLGAディスクを埋入した。埋入12週後に試料を回収し、ヘマトキシレン・エオジン染色を行ったところ、骨欠損部辺縁部に新生骨の形成が認められたが、線維性結合組織も観察された。また、PLGA単体とCaP/PLGAの新生骨形成量には有意な差はなかった。 そこで、CaP/PLGAディスクの骨再生能の向上を目的として、破骨細胞骨芽細胞間のカップリング因子の探索を行った。CaPディスクまたは象牙質上で初代破骨細胞培養を行い、カップリング因子の発現を調査したところ、CaP上においてEfnB2, SPHK1, SPHK2の上昇が認められた。今後はこれらの因子を応用し、CaPIPLGAディスクの骨再生向上に取り組む予定である。
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