研究概要 |
質量数60-100の核種の大半は、大質量星(太陽質量の10倍以上の質量を持つ星)中の遅い中性子捕獲反応であるWeak s過程で生成されたと考えられている。Weak s過程は、恒星中のHe燃焼過程で起こり、^22Ne(α,n)^<25>Mgで生成された中性子によって発生すると考えられている。一方で競合過程として^<22>Ne(α,γ)^<26>Mg反応も起こる事からα粒子と^<22>Neが消費され、恒星内部の中性子量については不明確である。^<22>Ne(α,n)^<25>Mgと^<22>Ne(α,γ)^<26>Mgの分岐比を正確に決定する事が、weak s過程による重元素生成量の決定につながる。特に、weak s過程での中性子供給に重要な役割を果たす、^<26>Mgの励起エネルギーE_x~11.3MeVでの共鳴反応は、実験グループによってE_xの値が異なり、議論となっている。本研究は、この共鳴のE_x決定と、^<22>Ne(α,n)^<25>Mg/^<22>Ne(α,γ)^<26>Mgの分岐比の決定に焦点を当てている。 実験は、^6Li(^<22>Ne,^<26>Mg)d反応によるα粒子移行反応を利用して行った。^4Heと^<22>Neを用いた直接測定では、ビームのエネルギーに対しクーロン障壁が大きすぎる為、実験が困難である為である。^<22>Neビームを日本原子力研究開発機構(原子力機構)のタンデム加速器で110MeVに加速し、Li_2CO_3標的に照射した。本実験を遂行するには、(1)実験室系で前方~3°で出射するMgを検出する為、ビームを直径1mm程度に絞り込み、弾性散乱の寄与を防ぐ事と、(2)検出器が^<26>Mgと^<25>Mg、及びp,d,tに対する十分な弁別能を持つ事、が要求される。 今年度の実験結果からは、Taのダブルスリットを用いる事で、ビーム直径1mmを実現できる事を確認した。一方、dのエネルギー分解能が十分な精度で得られない事がわかり、課題となった。この為、次回実験では、エネルギー分解能の改善を目標としている。また、統計精度を上げる事も目指している。
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