研究課題/領域番号 |
11J07528
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
太田 周也 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 先端基礎研究センター, 特別研究員PD
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キーワード | 天体核物理 / α粒子移行反応 / s-過程 / r-過程 / 中性子直接捕獲反応 |
研究概要 |
Weaks-過程による元素合成で重要な役割を果たす、^<22>Ne(α,n)^<25>Mg、^<22>Ne(eqγ)^<26>Mg反応の共鳴を調べる実験を、原子力機構のタンデム加速器で行った。本研究では、特に重要な共鳴反応である、^<22>Ne+α反応で生成された^<26>Mgの励起エネルギーE_x~11.3MeV共鳴のエネルギーを高精度に求める事を目指した。110MeVの^<22>Neビームを^6Li標的に照射、α粒子移行反応により^<26>Mg励起状態を生成する手法を採用した。今年度の試験測定では、イオン注入型のPINフォトダイオード検出器等を使用することで、d粒子のエネルギー分解能が~60keVで得られる事がわかったが、d粒子の散乱角度を十分に抑えて測定する事ができず、隣接する共鳴から分離してE_xを精密に決定出来なかった。実験ジオメトリを再検討した結果、検出器の配置を重心系で20°から40°に変更、スリットを配置してd粒子の散乱角度を絞る、等で現状のエネルギー分解能のまま共鳴を分離できる見込みであることがわかり、必要なチェンバーの開発を行った。 r過程で重要となる中性子過剰核の直接中性子捕獲反応の研究を目指し、中性子魔法数をもつ安定核である^<88>Srの中性子捕獲反応に着目し、J-PARCの高強度中性子ビームと中性子核反応測定装置を利用し、捕獲γ線分布の測定を行った。飛行時間法による幅広いエネルギーの中性子ビームと、高エネルギー分解能のGe検出器を用いて捕獲状態から^<89>Srの各準位へのγ遷移を観測した。γ線スペクトルの測定に成功したものの、観測を目標としていたγ遷移は、試料周辺の構造物に用いられているAl等からのバックグラウンドγ線から大きな影響を受けることがわかり、十分な精度で測定が困難という結論を得た。 ^<79>Se,^<85>Krの中性子捕獲反応については、代理反応による測定を目指していたが、今年度、受入研究室の進める^<18>Oビームと^<155,157>Gd標的などを用いた代理反応の試験測定に参加した結果、必要となるエネルギー領域で、中性子ビームによる捕獲反応断面積を十分な精度で再現することが難しいことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
東日本大震災の影響で、原子力機構のタンデム加速器建屋の修理により、実験ができない期間が長く、準備の遅れやビームタイムの延期が発生した。しかしながら、行ったテスト実験をもとに実験系の改良を行うことができたので、次回実験で十分なデータが得られる見込みである。J-PARCでの中性子直接捕獲反応の実験は、実験施設のγ線バックグラウンド情報の不備から、十分なデータが得られなかったが、現在は核子移行反応を用いた手法で研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
^<22>Ne(α,n)^<25>Mg、^<22>Ne(α,γ)^<26>Mgの共鳴反応の研究に関しては、開発したチェンバーを用い、高分解能のSi検出器、Li化合物標的の作製などを進めており、これらの努力により、平成25年度に予定している実験で目標の測定が達成できると期待している。中性子直接捕獲反応の研究は、中性子ビームを用いた研究手法に代わり、米国ラトガーズ大学・オークリッジ国立研究所の研究者と連絡を取り、中性子捕獲反応研究に関する情報の収集を行った。その結果、^<95>Mo(d,p)^<96>M0反応を用いた手法を採用した。また、代理反応法による中性子捕獲断面積導出については手法の開発に重点を置くこととした。^<95>Mo(d,p)^<96>M0反応による^<95>Moの中性子捕獲反応の研究を目的とした実験を行い、現在データ解析を進めている。
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