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2013 年度 実績報告書

疾患モデルカイコを用いた創薬技術の構築と天然薬物資源に基づく肝細胞癌治療薬の創出

研究課題

研究課題/領域番号 11J07545
研究機関東京大学

研究代表者

稲垣 善則  東京大学, 大学院薬学系研究科, 特別研究員(PD)

キーワード癌 / 抗癌剤 / 組織障害
研究概要

これまでの研究で、増殖細胞に対して強く細胞障害効果を誘導する薬剤を探索するin vitro評価系を構築した。癌細胞は細胞分裂を繰り返す増殖状態にあるのに対して、哺乳類動物体内における多くの細胞は非分裂状態にある。従って、非分裂細胞よりも分裂細胞に対して強い細胞障害効果を示す物質を探索するこのin vitro評価系は、有効な抗癌剤開発に繋がると考えられた。予備的研究では、複数の既存の抗癌剤がこの評価系において分裂細胞に対して強い細胞障害効果を示した。今年度は、様々な酵素の阻害剤として機能することが知られている化合物328種類に関してこの系による評価を実施したところ、分裂細胞に対する細胞障害効果(IC_50で評価)が非分裂細胞と比べて10倍以上強い化合物を8種類見出した。さらに、1種類の化合物について腹水癌モデルマウスに対する連続的な腹腔内投与を実施したところ、マウスの生存期間がPBS投与群と比較して有意に延長した。以上の結果から、本解析系は生体内で抗癌効果を有する化合物を探索するのに有用であることが示され、探索された化合物は抗癌剤候補化合物として有効であることが示唆された。
一方、カイコはアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の活性レベルに基づいて薬剤性組織障害を評価する動物モデルとして有用であることを示した。しかし、この評価系では体液を採取する必要があるため、検体が生きている状態で非侵襲的に組織障害性を評価することは困難であった。この問題を解決する評価モデルの構築を目的として、本研究ではGFP発現カイコを使用した。特殊餌を給餌して体表を透明化させたGFP発現カイコに対して組織障害性薬剤を投与して体外からカイコを観察したところ、カイコのGFPの蛍光強度が組織障害性薬剤の投与量依存的に減弱した。従って、透明化GFP発現カイコは、体外から観察されるGFPの蛍光強度に基づいて非侵襲的に組織障害性を評価できるモデルとして有用であることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

組織傷害モデルカイコに関する研究では、GFP発現カイコを用いて蛍光強度を指標とした組織障害評価モデルの構築に成功した。また、細胞を用いた抗癌剤候補化合物の探索に関する研究では、増殖細胞に対して強い細胞傷害効果を示す物質を見出した。以上の点から、本研究計画の目的である抗癌剤候補化合物として有望な物質の探索を達成し、かつ新規評価モデルの構築という当初の計画以上の成果をあげることができたといえる。

今後の研究の推進方策

本研究によって見出された抗癌剤候補化合物が哺乳動物体内で抗癌効果を発揮するか否かを複数のモデルを用いて実証する必要がある。また、この抗癌剤候補化合物に関して誘導体の開発を実施し、増殖抑制効果の向上や体内動態の改善などを図る。一方, 本研究で確立した抗癌剤候補化合物の探索に関する技術は、化合物ライブラリから有望な物質を見出す能力を有することが示された。従って、今後は天然物由来の物質などに対してこの技術を用いることにより、更なる新規薬剤の開発に繋がることが期待される。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2013

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 薬剤性組織傷害の動物モデルとしてのカイコの有用性2013

    • 著者名/発表者名
      稲垣善則、松本靖彦、松谷安恵、坪田拓也、瀬筒秀樹、関水和久.
    • 学会等名
      第26回日本動物実験代替法学会
    • 発表場所
      京都テルサ(京都府)
    • 年月日
      2013-12-20

URL: 

公開日: 2015-07-15  

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