研究概要 |
今年度はシステムレベルからアプリケーションレベルまで,様々なレイヤーから多面的に高信頼システムの設計技術の研究を行った. (1)ソフトエラーに対する耐故障LSI回路の動作合成手法を提案した.いくつかの演算器は全てのタイミングで使用されているわけではないことに着目し,三重化を構成するために新たに導入する演算器を最小限に抑え,効率良く高信頼LSIを生成する.研究成果は国内研究会および国際会議で発表した. (2)ソフトエラーだけでなく,LSIの製造ばらつきによる歩留りの低下も大きな問題である.信頼性が100%ではないハードウェア資源を活用して,LSI回路全体で高い信頼性を実現する高位合成手法を提案した.研究成果は国際会議で発表した. (3)(2)の手法よりさらに高い抽象度(ソフトウェア)のレベルから,アプリケーションの特徴を活用したアプローチも重要である.画像のパターンマッチングに着目し,少ない情報(ビット数)でマッチング確率を高める手法を提案した.研究成果は国際会議で発表した. (4)チップの微細化が進むにつれ,タイミング収束問題は益々深刻になっている.製造したLSI回路が所望の周波数を満たせない場合,不良品として破棄される(歩留りが低下する>恐れがある-所望の周波数制約を必ず満たし,かつ,LSI製造コスト(面積)を最小化する動作合成手法を提案した.研究成果は国際会議で発表した.本研究についての昨年度の国内研究会における発表が,情報処理学会山下研究記念賞を受賞した. (5)システムのリアルタイム性は最も重要な制約の1つである.近年スマートフォンなどの普及によりリアルタイムで提供したいサービスは益々大規模複雑化しており,ハードウェア・ソフトウェアの切り分けや並列処理技術の向上が必要である.高い並列性を出すとともに,ソフトウェアの再利用性を高めるハードウェア・ソフトウェアの協調設計手法を提案した.研究成果は国際会議2件で発表した.
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今後の研究の推進方策 |
今年度得られた研究成果をまとめ,国内論文誌へ論文を掲載することを目指す. 今年度行った幅広い研究から,高信頼システムの構築には,ハードウェアだけでなくソフトウェアも含めたシステム全体の包括的なアプローチが非常に重要であることを再認識した.今後も様々なレイヤーから多面的なアプローチにより,効率的・効果的に高信頼システムを設計する手法を確立することを目指す.今年度の研究をベースに拡張を行い,DACやDATEなどの一流国際会議での発表を狙う.
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