研究課題/領域番号 |
11J07608
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小松 尚太 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | AdS/CFT対応 / 相関関数 / 散乱振幅 |
研究概要 |
本研究の最終目的は、量子重力理論の有力候補である弦理論から予言される、AdS/CFT対応の検証及びそれが成り立つメカニズムの理解である。この対応は、ゲージ理論と曲がった時空中の弦理論の対応を意味している。研究初年度である平成23年度は、当初の予定ではゲージ理論のグルーオンの散乱振幅に着目しそれをゲージ理論側で理論の対称性に着目しながら解析していくことにより、曲がった時空が出現することを理解するという試みを行う予定であった。しかしながら、その準備段階として弦理論側でグルーオンの散乱振幅の解析に用いられてきた手法を再検討している中で、その手法がゲージ理論の相関関数の計算に役立つことが判明してきた。ゲージ理論において相関関数は散乱振幅と同等に非常に重要な役割を果たす物理量であり、それを弦理論側から計算できれば二つの理論の対応のメカニズムの理解および対応の検証に大きく役立つ。このような観点から、本年度はその大半を、弦理論側からの相関関数の導出に費やした。その結果、部分的にではあるが計算に成功し、論文を一遍出版することが出来た。これは初めて弦理論をもちいてゲージ理論の相関関数を計算する手法を提示した点で非常に意義深い成果であると考えている。この研究は現在も継続中であり、さらなる拡張、応用について研究を精力的に行っている。そのほかに本年度は、ゲージ理論を探るもう一つの非常に有用な手段である格子ゲージ理論について対称性の観点から基礎的な研究を行った。具体的には、格子ゲージ理論で提唱されているいくつかの作用についてそれが持つ対称性を明らかにし、同時に強結合極限で理論を解析し対称性がどのように理論の性質を定めているかを議論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、結果としては当初の計画とは若干異なる研究を行ったが、その結果今までいずれの先行研究も計算に成功していなかった物理量の計算に成功し、本研究の最終目的であるAdS/CFT対応の理解に向けた非常に重要な結果を得ることが出来たため、全体として当初の計画以上に進展しているといってよいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究で得られた相関関数の結果をさらに一般化し、同時にゲージ理論側でも対応する量の計算を行うことによって、ゲージ理論と弦理論がどのように対応しているかをより詳細に理解していきたいと考えている。そのため、当初の研究計画であった、散乱振幅の解析とは異なることを行うことになることが予想されるが、研究の最終目的であるAdS/CFT対応の理解という観点からみると、相関関数も散乱振幅も同様に意義深いものであると考えている。また、相関関数に関する理解がある程度深まったら、散乱振幅との関係性もより詳細に調べていき、当初の研究計画で予定していた内容も同時に追及していきたいと考えている。
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