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2011 年度 実績報告書

感染症媒介節足動物におけるトレランスの解明

研究課題

研究課題/領域番号 11J07684
研究機関東京慈恵会医科大学

研究代表者

青沼 宏佳  東京慈恵会医科大学, 医学部, 特別研究員(PD)

キーワード節足動物 / 蚊 / マラリア
研究概要

節足動物媒介性感染症の伝播には、媒介者である節足動物の存在が必須であり、これらの媒介節足動物は極めて興味深い特徴をもっている。それは、病原体を体内に有するにもかかわらず、自身は病気にはならないという点である。節足動物媒介性感染症であるマラリアは、人の赤血球内で分化したマラリア原虫(Plasmodium)が、ハマダラカ属の蚊(Anopheles)の吸血によってヒトからヒトへと運ばれて発症する。この時、媒介節足動物である蚊は「トレランス」によって、あたかもマラリア原虫と共存している状態を維持しているが、そのメカニズムは未解明な点が多い。また、ハマダラカ体内におけるマラリア原虫の発育には、ハマダラカ中腸細胞への侵入が不可欠であるが、この侵入が細胞特異的であるのか、もしくは非特異的であるのかについては、現在も明らかではない。そこで本年度は、ハマダラカにおけるマラリア原虫増殖組織である中腸の構造とそれを構成する細胞群に注目し、中腸内における細胞の分布・局在について解析を実施した。まず、ハマダラカの中腸細胞が均一であるか、または性質の異なる細胞が存在するのかを明らかにするため、様々な細胞小器官特異的染色液を用いて、中腸細胞の精査をおこなった。その結果、蚊の中腸には他細胞と形態・形質が異なる細胞様の構造が存在することを明らかにした。また、細胞死マーカーを用いて染色をおこなうと、この異質な細胞の一部と共局在することから、これらは細胞死の過程にある細胞であると推測された。さらに、中腸全体に分裂過程の細胞が多数存在することも明らかにした。以上の結果から、ハマダラカの中腸では常に細胞の入れ替わりが起こっていることを示した。これらの細胞の入れ替わりは吸血刺激によって活発化されることが予測され、マラリア原虫感染血液の吸血においては、マラリア原虫の中腸細胞侵入機構に関与していると推測される。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

病原体媒介節足動物が体内に病原体を持ち、どのように共存しているのかを明らかにするためには、病原体が感染する組織の詳細な解析が必須である。そこで本年度は、蚊の中腸の構造とそれを構成する細胞群に注目し、中腸内における細胞の分布・局在について解析を実施した。その結果、これまで明らかにされていなかった蚊の中腸細胞の入れ替わりを観察することに成功した。今後は今回の結果を基に、蚊の中腸が病原体と共存するメカニズム解析において、更なる発展が見込まれる。

今後の研究の推進方策

本年度の研究結果から、ハマダラカ中腸では細胞の入れ替わりが活発に起こっていること、そして吸血刺激によるこれらの細胞入れ替わりの更なる活性化が、マラリア原虫の中腸侵入、ひいてはハマダラカステージのマラリア原虫の発育に、大きく影響している可能性が示唆された。そこで今後は、実際にマラリア原虫感染血液をハマダラカに吸血させ、中腸の構造や細胞の入れ替わりが、マラリア原虫の侵入および発育にどのように影響するのかについて、詳細な解析を進める計画である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2012

すべて 図書 (1件)

  • [図書] 「病原体を運ぶ蚊の免疫システム」化学と生物2012

    • 著者名/発表者名
      横山卓也、 青沼宏佳、 嘉糠洋陸
    • 総ページ数
      7
    • 出版者
      日本農芸化学会

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公開日: 2013-06-26  

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