研究課題/領域番号 |
11J07727
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
伊藤 健一郎 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 特殊環状ペプチド / RaPIDシステム / 試験管内スクリーニング / アゴニストペプチド |
研究概要 |
前年度に特殊ペプチドのスクリーニングにおいてc-Met(HGFレセプター)に結合する環状ペプチドが取得されたため、本年度はこのペプチドの応用を図ることを主とした。研究の応用としては(1)抗癌剤ペプチドの開発、(2)再生医薬ペプチドの開発、(3)腫瘍PETプローブの開発の3点を目標として立て、複数の共同研究などを遂行することで効率的に研究を進めた。 (1)に関しては、c-Metタンパク質の作用機序に合わせてスクリーニングで得られたペプチドに化学修飾を加える、という新規な戦略をとることで達成を狙ったが、達成することはできなかった。スクリーニング法を変更するなどの新たな戦略が求められ、次年度は戦略の方針転換を行う予定である。 (2)は、スクリーニングで得たペプチドをアゴニスト(活性化剤)として高機能化するという挑戦的な研究であった。ここでもc-Metの作用機序を理解した上でペプチドに化学修飾を加えるという戦略をとった。具体的には、c-Metを強制的に二量化できるような分子として、ペプチドをクロスリンカー剤でホモダイマー化した。この分子はc-Metのリン酸化を誘導し、細胞の増殖を促進するというアゴニストとしての機能を有していた。スクリーニングを用いてc-Metのアゴニストペプチドを開発した例はこれまでになく、またアゴニストとなる低分子も世界で初めての開発例であり、大きなインパクトを持つ研究を達成したと考えられる。 (3)は、前年度に引き続きソウル国立大学の研究チームとプローブの開発を進めており、in vivoでのチオエーテル特殊環状ペプチドの応用を試みるつもりである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年はc-Metに対するアゴニストの創成に成功しており、特殊ペプチド創薬分野における新しい技術開発に大きく寄与している。上記以外にも、新しい特殊環状ペプチド関連技術の開発に成功しており、リボソームを用いた翻訳技術を用いた応用的な手法の発展に寄与している。また、研究発表状況としても、複数の学会での発表、論文や学会誌への投稿などを行なっており、研究は順調に進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる平成25年度は、まずc-Met結合特殊環状ペプチドの応用に主眼を置く。特に、既に生物活性まで確認されているc-Metアゴニストペプチドは分子の最適化や詳細な生物活性の確認を行い、実用へ向けた研究を進める予定である。また、他の技術研究についても研究を進め、それぞれ論文として発表を行う予定である。
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