• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2012 年度 実績報告書

深海の木材穿孔性二枚貝キクイガイ類の多様性創出機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 11J07855
研究機関独立行政法人海洋研究開発機構

研究代表者

芳賀 拓真  独立行政法人海洋研究開発機構, 海洋・極限環境生物圏領域, 特別研究員(PD)

キーワード分子系統 / 沈木生物群集 / 比較解剖 / 系統分類 / 共生細菌 / 未記載種 / 木材食 / 進化
研究概要

キクイガイ科二枚貝類は,深海に沈んだ木材に穿孔して生活し,木を餌資源とする極めて特異な分類群である。共生細菌の獲得が本科の多様化を引き起こしたという仮説を検証するため,平成24年度は以下の項目を実施した。1.東支那海の漸深海で調査を実施し,10種の未記載種を見いだした。これらには,昨年度の分子系統解析等に基づくキクイガイ科内の体系再編で明らかとなった4つの分類群を繋ぐと予想される,極めて重要な種類が含まれており,予察的な検討を進めた。2.パプアニューギニアにおいて調査を実施した結果,驚くべきことに,ごく浅海域にもキクイガイ類が棲息することが初めて明らかとなった。この発見は従来の知見を覆すものである。当該種は未記載種の可能性があり,詳細な検討を進めている。3.キクイガイ類で見られる着底後幼生様の小型個体が矮雄であることを初めて明らかにした論文を,これまでの研究成果と合わせてJournal of Molluscan Studies誌上で発表した。4.キクイガイ類の共生細菌の伝播機構を明らかにするため,キクイガイの生殖巣の超薄連続組織切片を作成,透過型電子顕微鏡下で細菌の存在を観察した。その結果,何れの個体,細胞においても細菌像は得られず,共生細菌は水平獲得されている可能性があることが示唆された。5.木材食のメカニズムを明らかにするため,海洋研究開発機構との共同研究として,キクイガイを対象としてトランスクリプトーム解析を実施した。その結果,多様な糖質加水分解酵素関連遺伝子が見いだされた。窒素・炭素同位体比測定に基づく先行研究で示唆されたように,キクイガイ類はセルロースを炭素源に,共生細菌を窒素源として利用していると考えられ,これまで言われてきた「共生細菌によるセルロース分解説」は見直されるべきことが明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

これまでの研究によって,キクイガイ類の共生細菌は鯉以外には存在せず,水平獲得されている可能性が高いことが明らかとなり,概ね順調に進展している。トランスクリプトーム解析のデータが得られことも大きな進展の一つであり,より高精度な実験を遂行するための基礎的データを構築できたことから,最終年度で更なる進展が得られるよう尽力する。

今後の研究の推進方策

平成25年度も,概ね当初の予定に則って研究を進める。しかし,共生細菌の培養等のハンドリングが困難であることから,細菌の培養系を対象とした実験を中止する。その一方,キクイガイ自体のセルラーゼ遺伝子群に特に注目し,蛍光in situハイブリダイゼーション(以下,FISH)を重点的に実施して,本研究の附加的内容である,キクイガイ類の木材食のメカニズムを明らかにすることにも取り組む。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] 幼貝?それとも雄?-深海の沈んだ木に棲息するキクイガイ科二枚貝類の生殖2013

    • 著者名/発表者名
      芳賀拓真
    • 雑誌名

      うみうし通信

      巻: 78 ページ: 7-9

  • [雑誌論文] Screening and phylogenetic analysis of deep-sea bacteria capable of metabolizing lignin-derived aromaric compounds.2012

    • 著者名/発表者名
      Ohta, Y., Nishi, S., Haga, T., Tsubouchi, T., Hasegawa, R., Konishi, M., Nagao, Y., Tsurukawa, Y., Shimane, Y., Mori, K., Usui, K., Suda, E., Tsutsui, K., Nishimoto, A., Fujiwara, Y., Maruyama, T., Hatada, Y.
    • 雑誌名

      Open Journal of Marine Science

      巻: 2 ページ: 177-187

    • DOI

      10.4236/ojms.2012.24021

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Progenetic dwarf males in the deep-sea wood-boring genus Xylophaga (Bivalvia : Pholadoidea).2012

    • 著者名/発表者名
      Haga, T., Kase, T.
    • 雑誌名

      Journal of Molluscan Studies

      巻: 79(10.1093/mollus/eys037) ページ: 90-94

    • 査読あり
  • [学会発表] 穿孔性二枚貝ニオガイ上科の適応放散史-分子系統・化石記録から形態・食性進化に迫る-2013

    • 著者名/発表者名
      芳賀拓真, 加瀬友喜
    • 学会等名
      日本生態学会
    • 発表場所
      静岡県コンベンションアーツセンター(招待講演)
    • 年月日
      2013-03-05
  • [学会発表] Isolation and phylogenetic analysis of Lignin-related Aromatic Compound Metabolizing Bacteria from the Deep Sea.2012

    • 著者名/発表者名
      Ohta, Y., Nishi, S., Hasegawa, R., Haga, T., Tsubouchi, T., Konishi, M., Nagano, Y., Tsurukawa, Y., Shimane, Y., Mori, K., Usui, K., Kobayashi, K., Tanizaki, A., Nishihara, M., Tsutsui, K., Nishimoto, A., Fujiwara, Y., Maruyama, T. & Hatada, Y.
    • 学会等名
      第57回リグニン検討会
    • 発表場所
      アクロス福岡
    • 年月日
      20121017-20121018
  • [学会発表] 深海に流入した木片における生物侵蝕過程2012

    • 著者名/発表者名
      西本篤史, 矢野航, 芳賀拓真, 白山義久
    • 学会等名
      日本プランクトン学会・日本ベントス学会
    • 発表場所
      東邦大学習志野キャンパス(千葉県船橋市)
    • 年月日
      20121005-20121008
  • [学会発表] 木材食性キクイガイ科二枚貝類(ニオガイ上科)の鰓及び共生細菌の形態2012

    • 著者名/発表者名
      芳賀拓真, 植松勝之, 多米晃裕, 藤原義弘
    • 学会等名
      日本貝類学会
    • 発表場所
      東京家政学院大学(千代田区市ヶ谷)
    • 年月日
      20120414-20120415
  • [備考]

    • URL

      http://www.jamstec.go.jp/biogeos/j/mbrp/cheer/Takuma_HAGA.html

URL: 

公開日: 2014-07-16  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi