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2013 年度 実績報告書

深海の木材穿孔性二枚貝キクイガイ類の多様性創出機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 11J07855
研究機関独立行政法人海洋研究開発機構

研究代表者

芳賀 拓真  独立行政法人海洋研究開発機構, 海洋・極限環境生物圏領域, 特別研究員(PD)

キーワード分子系統 / 沈木生物群集 / 比較解剖 / 系統分類 / 共生細菌 / 未記載種 / 木材食 / 進化
研究概要

キクイガイ科二枚貝類は, 深海に沈んだ木材に穿孔して生活し, 木を餌資源とする極めて特異な分類群である。本科の多様性とその多様化の背景を明らかにするため研究を進め, 平成25年度は主に以下の成果が得られた。1. 東北沖太平洋岸において, 新青丸を用いた追加調査を実施した。当海域では先行する多数の深海調査によって多数のキクイガイ類標本が得られてきたが, それらの試料は生時に観察すべき附属的形態形質が不明のままであったため, 記載分類を実施するのが困難であった。この追加調査によって十分な情報が得られ, 当該海域における未記載種の整理を進めた。2. 特定の植物組織にのみ棲息するキクイガイ類はこれまで知られていなかった。しかし, 南西太平洋産の試料の検討を進めた結果, 「ヤシ類果実の内果皮でのみ生活する」3新種の存在が明らかとなった。これらの新種は特徴的な殻形態をもち, 形態的・分子系統学的に既知のどの属にも該当せず, 新属を設立する必要があることも明らかとなった。分子系統学的検討の結果, 本新属はキクイガイ科の原始的な群の一つであること, そして, 本新属の推定出現年代は約120Myaであることが明らかとなった。この分岐年代推定値はヤシ類植物の出現と整合的であり, 本新属が白亜紀前期にヤシ類へ適応進化したことを示唆している。3. 現地調査の過程で得られたハマユウガイ科ダイアナハマユウ属の1新種を新種記載した。本種は二枚貝などの穿孔生物によって提供される隠蔽的環境に特化して棲息していることから, 穿孔生物の活動によって提供される隠蔽的環境が, 非生物起源の硬基質環境においても種の多様性創出に寄与することを示唆する一例であると考えられる。4. 現地調査の際に得られた沈木試料について海洋研究開発機構との共同研究を進め, 後者が中心となり, 沈木から単離したNovosphingobium属細菌のゲノム解析等を実施し, これが木質リグニン分解の代謝能を有することを明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

これまでの研究により, キクイガイ類は, 1)共生細菌を水平獲得して鰓に住まわせ, 窒素固定させ, 窒素源として利用し, 2)自身がセルラーゼに分類される数多くの糖質加水分解酵素を産生し, 木質セルロースを分解して炭素源として利用するうえ, 3)多種類のセルラーゼを運用することで多くの樹種と植物組織に適応して生活でき, そして 4)合理的な複数の性表現によって効率的に生殖・分散することができる, といった「キクイガイ類の多様化の要因」を明らかにすることができ, 概ね順調な進展が得られたと思われる。

今後の研究の推進方策

東関東大震災の影響により, 当初予定していたサンプルの入手が困難となったうえ, 共生細菌のハンドリングが困難であることがわかり, 生体を用いた実験成果は思うように導くことができなかった。これらについての検証を進めるいっぽう, これまでの成果を着実に論文化して行く。さらに, トランスクリプトーム解析によって得られた遺伝子情報をもとにし, 発展的研究にも着手して行く予定である。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2014 2013 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (6件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Thalassospira alkalitolerans sp. nov. and Thalassospira mesophila sp. nov., isolated from a decaying bamboo sunken in the marine environment, and emended description of the genus Thalassospira.2014

    • 著者名/発表者名
      Tsubouchi, T., Ohta, Y., Haga, T., Usui, K., Shimane, Y., Mori, K., Tanizaki, A., Adachi, A., Kobayashi, K., Yukawa, K., Takagi, E., Tame, A., Uematsu, K., Maruyama, T & Hatada, Y.
    • 雑誌名

      International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology

      巻: 64 ページ: 107-115

    • DOI

      10.1099/ijs.0.056028-0

    • 査読あり
  • [雑誌論文] A new species of Dianadema (Bivalvia : Pholadomyida : Clavagelloidea) from Japan.2014

    • 著者名/発表者名
      Morton, B. & Haga, T
    • 雑誌名

      Venus

      巻: 72 ページ: 1-11

    • 査読あり
  • [学会発表] リグニン代謝能を有すNovosphingobium属細菌のゲノム解析.2014

    • 著者名/発表者名
      西 真郎・大田ゆかり・飯田加賀美・小林樹和・長谷川良一・黒澤佳奈子・谷崎明子・足立明子・佐藤玲央奈・芳賀拓真・坪内泰志・丸山正・秦田勇二.
    • 学会等名
      第8回日本ゲノム微生物学会年会.
    • 発表場所
      東京農業大学世田谷キャンパス(東京都世田谷区)
    • 年月日
      20140307-09
  • [学会発表] 深海沈木から単離したNovosphingobium属細菌によるリグニンモデル化合物代謝.2014

    • 著者名/発表者名
      大田ゆかり・長谷川良一・黒澤佳奈子・谷崎明子・足立明子・芳賀拓真・丸山 正・秦田勇二.
    • 学会等名
      第64回日本木材学会大会.
    • 発表場所
      愛媛大学城北キャンパス(愛媛県松山市)
    • 年月日
      2014-03-14
  • [学会発表] 二枚貝共生系による木質分解について : フナクイムシのRNA-seq解析.2013

    • 著者名/発表者名
      高木善弘・小澤元希・西 真郎・芳賀拓真・吉田尊雄・秦田勇二.
    • 学会等名
      2013年度TEAMS全体会議
    • 発表場所
      東北大学川内北キャンパス(宮城県仙台市)
    • 年月日
      20130608-09
  • [学会発表] 浅海における生物による木材破砕プロセスの解明~木片の海底設置実験~.2013

    • 著者名/発表者名
      西本篤史・芳賀拓真・朝倉 彰・白山義久.
    • 学会等名
      2013年度日本プランクトン学会・日本ベントス学会合同大会.
    • 発表場所
      東北大学雨宮キャンパス(宮城県仙台市)
    • 年月日
      2013-09-29
  • [学会発表] 二枚貝共生系による木質分解について―フナクイムシのRNA-seq解析.2013

    • 著者名/発表者名
      高木善弘・小澤元希・西 真郎・芳賀拓真・柴田晴佳・吉田尊雄・秦田勇二・藤原義弘.
    • 学会等名
      国際シンポジウム & 第2回マトリョーシカ型生物学研究会
    • 発表場所
      ホテル京都ガーデンパレス(京都府京都市)
    • 年月日
      2013-07-25
  • [学会発表] キクイガイ類二枚貝はどのようにして木を分解しているのか?2013

    • 著者名/発表者名
      芳賀拓真・西 真郎・秦田勇二・大田ゆかり・植松勝之・多米晃裕・西本篤史・藤原義弘.
    • 学会等名
      日本貝類学会平成25年度大会
    • 発表場所
      豊橋市自然史博物館(愛知県豊橋市)
    • 年月日
      2013-04-21
  • [備考]

    • URL

      http://www.jamstec.go.jp/biogeos/j/mbrp/cheer/Takuma_HAGA.html

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公開日: 2015-07-15  

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