研究概要 |
これまでの研究で申請者らは,TDP-43によってスプライシングが制御される新規遺伝子として,Polymerase delta interacting protein3(POLDIP3)を同定した.POLDIP3は,exon3のin-outにより,全長型のPOLDIP3-variant1,exon3欠損型でin-frameの蛋白質を発現するPOLDIP3-variant2の2つのtranscript variantがあることが知られている.申請者らは,TDP-43の発現抑制によりexon3欠損型であるPOLDIP3-variant2の発現が増加する事を明らかとした. POLDIP3は,S6K1の基質としてmTORシグナルに関わり,細胞の成長に関わる.実際にPOLDIP3をノックダウンして細胞の大きさをフローサイトメーターで測定すると,コントロールに比べて,約10%,細胞の大きさが減少した.一方,TDP-43をノックダウンすると,POLDIP3ノックダウン時の細胞と同程度の大きさの減少を示した.この結果から,POLDIP3 variant-2は,variant-1の機能を持たない,機能低下型POLDIP3である可能性が示唆された. この結果をより確かなものとするために,POLDIP3 variant-1を一過性に発現させることで,細胞の大きさの減少に改善を認めるかを検討した.結果,variant-1一過性発現細胞では,約25%,大きさの改善を認め,TDP-43ノックダウンによる細胞の大きさの減少に,POLDIP3が関わっていることが示された.一方,variant-2一過性発現細胞株では,大きさの改善が10%に留まっており,このことから,variant-2が機能低下型のPOLDIP3であることが示唆された.
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