研究課題/領域番号 |
11J07977
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研究機関 | 独立行政法人農業生物資源研究所 |
研究代表者 |
関根 一希 独立行政法人農業生物資源研究所, 昆虫成長制御研究ユニット, 特別研究員(PD)
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キーワード | 減数分裂 / 性 / 精子形成 / 成熟分裂 / 単為生殖 / 膜翅目 / 半数-倍数性 / ノックダウン |
研究概要 |
膜翅目(ハチ目)昆虫では、メス個体は受精卵から生じる二倍体であり、オス個体は単為発生卵から生じる半数体である半数二倍体単為生殖システムが認められる。精子形成の際には精母細胞が体細胞分裂様に分裂(成熟分裂)し、減数分裂を行なわない。本研究では、どのような遺伝的メカニズムを獲得することで生殖細胞における減数分裂の回避・分化機構へと至るのかを明らかにすることを目的に、二本鎖RNAのインジェクションにより容易に標的遺伝子の機能を阻害できるRNAiなどの遺伝子機能解析が確立されているカブラババチを研究対象としてきた。近年の膜翅目昆虫のゲノム解析の結果では、ショウジョウバエにおいてオス特異的な減数分裂のエントリーに必要とされる遺伝子であるboule(bol)およびcourtless(crl)が認められている。減数分裂を行なわない精子形成をする膜翅目にとって、その機能は謎である。 そこで、本年度はbolとその下流遺伝子であるcdc25ホモログについて、RT-PCRにより、これらの遺伝子の発現部位や発現ステージを調べた。bolは複数の転写産物を生じ、成熟分裂ステージである前蛹-蛹初期の精巣で特異的に発現する分子種が存在すること、このbolの分子種にやや遅れてcdc25が精巣にて発現することを明らかにした。また、bolおよびcdc25遺伝子のエキソン領域から二本鎖RNAを作製し、これらを幼虫個体や成虫個体にインジェクションする、Larval RNAiやParental RNAiによる遺伝子機能阻害(ノックダウン)実験により、いずれの遺伝子についても機能が阻害されると正常に精子形成が進行しなかった。膜翅自の半数体のオス個体からの精子形成(成熟分裂や精子分化)においてもbolの機能が必須であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初、計画していた研究に加えて、次世代シーケンサーによるカブラババチのゲノムやトランスクリプトーム解析データが蓄積されたため、クローニング済みのbo1やcdc25以外の遺伝子についても容易にノックダウンすることが可能になった。また、本種の培養細胞も完成しつつあり、新たな実験系からのアプローチも可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
前年度にひきつづき、カブラババチのゲノムおよびトランスクリプトーム解析データを用いて、単為生殖・減数分裂回避に関わる候補遺伝子を網羅的に探索し、遺伝子機能を阻害することで半数・倍数性・単為生殖の進化に関わる遺伝子を探索する。また、クローニングを終えた候補遺伝子については、エキソン領域から二本鎖RNAを作製し、これらを幼虫個体や成虫個体にインジェクションするといった、Larval RNAiやParental RNAiによる遺伝子機能阻害、および組織化学的手法や免疫抗体染色法により、候補遺伝子の機能を明らかにしていく。また、実験系が確立しつつある培養細胞やトランスジェネシス法を利用した候補遺伝子機能の解明にも取り組む。
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