研究課題/領域番号 |
11J07980
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
西田 郁久 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | トランスポーター / プロリン / アミノ酸 / ミトコンドリア / 液胞 / オルガネラ / 酵母 / 細胞内輸送 |
研究概要 |
プロリンは生物において、細胞内浸透圧調節やレドックス制御などに関わり、細胞保護機能を有する。またプロリンはミトコンドリアで分解されて炭素源・窒素源・エネルギー源になる。しかしながら、ミトコンドリアにおけるプロリン輸送機構や生理的意義は明らかではなく、本研究では酵母Saccharomyces cerevisiaeを用いてトランスポーターの同定を試みた。まず野生株(BY4741)のミトコンドリアのアミノ酸を解析したところ、プロリンが検出された。さらに、ミトコンドリアにプロリンを添加して反応後に分析した結果、プロリンの分解物であるグルタミン酸の生成が確認された。また、^<14>Cプロリンを用いてミトコンドリアのプロリン輸送活性を測定したところ、時間依存的な放射活性上昇が見られた。これらのことから、酵母においてトランスポーターを介したプロリンの輸送経路が存在している可能性が初めて示された。さらに、プロリン合成系および輸送系遺伝子の両方の欠損により低濃度(50μM)プロリン添加最少培地では生育できない大腸菌変異株を用い、酵母ミトコンドリアトランスポーター遺伝子を導入時の生育の回復を指標にスクリーニングを行った。その結果、複数の候補遺伝子を取得しており解析を進めている。 一方、プロリンが高濃度に存在する細胞では、液胞へのプロリン蓄積が示唆されており、液胞のプロリントランスポーターの同定も試みた。これまでのスクリーニングで、AVT7破壊株をプロリン添加培地で培養すると細胞内プロリン含量が野生株に比べて低下するという興味深い現象を発見しており、どのようにしてAvt7が細胞内プロリン含量を制御しているかの解析を行っている。現在までに、Avt7とGFPの融合タンパク質が小胞体様の膜で局在していることや、AVT7遺伝子の破壊がアミノ酸代謝遺伝子の発現に影響している可能性を示唆する結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は酵母Saccharomyces cerevisiaeの細胞内オルガネラにおけるプロリントランスポーター同定とその輸送機構の解明である。現在までに、ミトコンドリアにおけるプロリンの存在と分解能、輸送の3点を確認した点では進展があった。しかしながらトランスポーターの同定には至っていないためやや遅れている。また、プロリンの細胞内濃度制御に関わると考えられる.AVT7をスクリーニングから取得しておりアミノ酸代謝酵素遺伝子の発現やプロリン輸送活性測定を候補遺伝子欠損株や過剰発現株等で解析中である。Avt7については、局在性や機能がわかりつつあり、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
1.酵母Saccharomyces cerevisiaeにおけるミトコンドリアの新規プロリントランスポーターの探索 大腸菌変異株、単離ミトコンドリア、プロテオリポソーム等を用いて輸送活性測定を行い、ミトコンドリアにおけるトランスポーターを介したプロリン輸送機構の解明を目指す。 2.出芽酵母Saccharomyces cerevisiae Avt7の機能解析 細胞破砕液を分画するなどしてAvt7の局在を詳細に明らかにする。また、プロリンが細胞内で減少する原因をプロリンやその周辺の他のアミノ酸代謝に着目し、転写レベル、酵素活性レベルで解析を行う予定である。また、プロリンの細胞内輸送低下を検証するためにAVT7破壊株におけるプロリンの取り込み活性も測定する。
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