研究概要 |
本研究課題ではヒト側頭葉から計測された皮質脳波信号を利用し,1.信号から被験者の体験している視覚情報を読み出す(デコーディングする)こと,及び,2.睡眠中に覚醒時の視覚体験がリプレイされる現象を観測することを目的としている.採用研究者はその目的達成のため,今年度は以下の活動を行った. 1については,脳表面の多点から計測される信号の時空間パターンを利用する方法を提案した.先行研究では物体認識には脳の多数の部位が関わっていることが示されており,脳は多数の部位間の信号を統合するために,部位間の神経活動の同期や位相差など,相対的な時間差に基づいた時空間的パターシを用いて情報を表現していることが示唆されている.これを確かめるため,脳の多点から信号を同時に計測することができる皮質脳波を用い,ヒトが物体画像を提示されている時の脳活動を記録した.記録した脳活動の部位間の同期・位相差から提示している物体のカテゴリーを予測する(デコードする)予測器を作成し,その精度を用いて物体の情報がそのような脳活動のパターンに表現されているかを検証した.結果,計測された皮質脳波信号の詳細な位相差,同期にカテゴリーの情報がのっており,それらを利用することで,デコードの予測精度を向上できることが判明した.現在,その情報表現の性質をさらに調べ,論文としてまとめている. 2については関連するラットでの実験結果をもとに,ヒトにおいてどのような実験デザインが適切かを検討した.来年度より睡眠中の皮質脳波計測を実施し,リプレイ現象の観測を試みる予定である.現在まで年次計画通り進んでおり,今後も予定通り研究を進められることと期待できる.
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今後の研究の推進方策 |
ヒト側頭葉からの皮質脳波を用いた物体情報のデコーディングについては,現在論文を作成中であり,今年度中の採択を目指し,引き続き取りかかる予定である.睡眠時リプレイの検出については,ヒトの睡眠中の皮質脳波計測を今年度より開始し,解析に寄りかかる予定である.
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