研究概要 |
皮質脳波とは脳表面に設置された電極により,脳活動を多点同時計測することができる手法である.本研究課題では,これにより計測された脳信号から,被験者の視覚・想起している情報を読み出す(デコーディングする)アプローチによって,それらの情報がどのように脳に表現されているのかを調べる. 1.皮質脳波の時空間パターンを用いた視覚物体のデコーディング 本テーマでは,多点から計測された脳活動の時間パターンに視覚された物体の情報が表現されているかどうかを調べた.先行研究によって,視覚された物体のカテゴリーの情報は,多数の神経細胞の活動によって表現されていることが示唆されている.しかし,それらの先行研究では計測された信号の時間パターンには着目しておらず,活動の起こるタイミングが情報表現に重要な役割を果たしているかどうかはわかっていない.本研究では高い時間分解能で多点同時に脳活動を計測できる皮質脳波を計測した.そして,電極間の相関を利用することで,被験者に提示された物体のカテゴリーを高い精度で予測できることを示した.電極間の相関は,信号の同期の度合いを測る指標として用いられるもので,信号の詳細な時間パターン有効に利用し,情報を抽出できると考えられる.この結果は,カテゴリーの情報表現において,脳活動の時間パターンが用いられていることを示唆している.今年度は特に,その結果まとめ論文にする作業を行い,2013年4月に国際誌に投稿する予定である. 2.連想記憶課題における想起された物体のデコーディング 本テーマでは,保持されている短期記憶の情報がどのように脳にコードされているのかを調べるため,記憶を保持している期間(遅延期間)の皮質脳波信号から,その内容を予測することを試みた.本年度より予備解析を始めた.来年度も継続して解析を行う予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
皮質脳波の時間パターンを用いたデコーディングにおいて,結果をまとめ,論文を作成した.また連想記憶のデコーディングにおいて,予備解析を開始きた.いずれのデータとも,二年目に予定していた項目が達成されており,おおむね順調と考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
皮質脳波の時間パターンの時間パターンを用いたデコーディングに関する結果は,2013年4月に論文を投稿予定であり,継続して,採択を目指し,取りかかる予定である.連想記憶のデコーディングのテーマは本実験を開始し,結果をまとめる予定である.
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