研究概要 |
生活習慣の欧米化等により,近年我が国においても虚血性心疾患が急増しており,虚血性心筋症の治療成績を向上させることは喫緊の課題である.虚血性心筋症の外科治療,特に左心形成術を的確に行い患者の心機能を回復させるためには,心筋バイアビリティ(虚血障害心筋が血行再建によって機能を回復出来る能力)の評価が必須である.本研究では,ラマン散乱光の持つ分子情報をもとにした心筋バイアビリティイメージングの基盤技術を確立することである. 本年度は,心筋バイアビリティとラマンスペクトルの関係性の解析を行った.ラット冠動脈の結紮によって得られるラット虚血心筋モデルを作成し,スリット走査型ラマン散乱顕微鏡を用いてラット心筋梗塞巣のラマンスペクトル計測を行った.その結果,慢性期心筋梗塞巣におけるラマンスペクトルと正常心筋におけるラマンスペクトルに有意な差が見られた. また,フォトニック結晶ファイバーを用いた非線形ラマン散乱顕微鏡の試作を行った.その結果,フォトニック結晶ファイバーにより広帯域光を発生させ,非線形ラマンスペクトルを一度の照射で取得可能なシングルレーザー非線形ラマン顕微鏡の開発に成功した.また,既知のラマンスペクトルを有する物質を用いて,コヒーレント反ストークスラマン散乱スペクトルの取得にも成功し,基礎分光特性(波数分解能,レーザーパワー等)についても検証した.
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