研究課題/領域番号 |
11J08152
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
坂本 邦暢 東京外国語大学, 大学院・総合国際学研究院, 特別研究員(PD)
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キーワード | 歴史 / 哲学 / 西洋 / ルネサンス / 初期近代 / 科学史 |
研究概要 |
残念ながら昨年度は研究成果を発表するには至らなかったものの、今後の研究の土台となるいくつかの基礎的調査を行うことができた。まずは15世紀後半から16世紀初頭にかけてのイタリアでの大学教育とそこで発展していた哲学の諸特徴の理解を、主要な研究文献と史料を読むことで深めた。この作業により本研究計画の出発点となるルネサンスイタリア哲学の制度的背景を明らかにすることができた。具体的には、大学史、哲学史、およびユリウス・カエサル・スカリゲル(1484-1558)の著作の読解を通じて、神学部を欠くイタリアの大学では哲学を信仰から切り離して論じる傾向が表れており、それに対するいわば反動が16世紀の半ばに特殊な形の物質論を生み出すにいたったという道筋を史料から確認することができた。これと並行して、アルプス以北のドイツ、フランス、イングランドで17世紀に発展することになる機械論哲学(mechanical philosophy)について最新のヒストリオグラフィをおさえることを行った。これにより伝統的歴史叙述では見逃されがちであった、化学と生物学の分野が新たな原子論・粒子論を妥当性を判定するいわば試金石として機能していたことを学ぶことができた。この調査により今後、前世紀までにイタリアで発展していた哲学がいかに北方に移植されて、その後化学・生物学の分野でどのように独自の発展をとげたのかを調査する準備作業が完成したと言える。なおこれらの成果は代表者が運営しているブログ上にて随時報告・公開されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
博士論文の執筆が昨年度にまでずれこんでしまったため、成果を公表するための学会での口頭報告が十分にできなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は昨年度に行った研究文献の読み込みを受けて、初期近代に執筆された諸著作の読解、およびその成果を口頭発表や論文投稿によって形にしていく予定である。
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