研究課題/領域番号 |
11J08157
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
竹尾 明子 東京大学, 地震研究所, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 地震波速度構造 / プレートテクトニクス |
研究概要 |
本課題は広帯域海底地震計の記録を解析し、海底下の深さ約10-100kmの地震波速度構造を推定するものである。特に、地震波速度が伝播方向や振動方向によって変わる性質、異方性をテーマとしている。地震波速度や異方性は地球内部岩石の流動性や変形史を反映するため、プレート運動などついての理解を深められると期待される。まず、表面波と呼ばれる地震波の速度を広帯域において測定すると共に測定誤差を求める手法を開発した。この手法を日本の南にある四国海盆でStagnant Slab Projectによって得られた広帯域海底地震計記録に適用し、表面波速度を周期7-100秒で測定した。これにより構造推定の鉛直解像度の改善に成功し、四国海盆下の深さ50km以深では浅部と比べて地震波速度が4%以上低いこと、異方性も浅部と比べて強いことを明らかにした。この結果は厚さ約50kmのプレートの下に変形が集中していること、岩石の部分溶融が起こっている可能性を示唆する。さらに、TIARESプロジェクトによって太平洋南部のフレンチポリネシア地域で得られた広帯域海底地震計記録を解析した。四国海盆と同様の手法を適用し周期2.5-100秒で表面波速度の測定に成功した。また、浅部と深部の速度差が四国海盆に比べて小さいこと、異方性の深さ変化も少ないことなどを明らかにした。このような違いはプレートの年代の違いを反映している可能性がある。さらに、伝播方向異方性を推定した結果、深さ50-100kmのにおいて岩石学から予想される異方性パターンと一致することを明らかにした。この結果を踏まえ、より浅部における地震波速度の異方性を推定するため手法を開発した。しかし、四国海盆やフレンチポリネシアの記録からは明瞭な異方性を確認できなかった。今後、他地域の記録に手法を適用することでプレート運動に伴う岩石の変形史を推定できると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り解析手法の開発を行い、論文を国際学術誌に投稿した。論文は現在査読中である。一方、解析予定であった海底地震計記録については東日本大震災の影響で回収が遅れ、解析できていない。その代わりに南太平洋で得られた新たな海底地震計記録の解析を進め、手法の改良および新たな手法の開発を行った。手法および結果について国内外の学会で発表した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度開発した解析手法を用いて海底地震計記録の解析を行う。特に、アメリカの研究グループが得た北西太平洋の記録、日本の研究グループが取得した南太平洋の記録、および日本の研究グループが取得予定の北西太平洋の記録(科学研究費、特別推進22000003)の解析を行う。また、必要に応じて手法開発を行う。ただし、日本の研究グループによる北西太平洋への海底地震計設置および回収については、東日本大震災の影響で遅れが出ている。そこで陸上記録の解析を先に行い、手法の改良に役立てる。また、陸域の構造も推定し、海域の構造と比較を行う。
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