研究概要 |
(研究1)鉱物の原子拡散速度は地球内部の流動特性や元素移動特性に影響する。本研究では、MgO periclaseとSiO_2 stishoviteを高温高圧条件下で反応させることでperovskite反応縁成長カイネティクスを明らかにし、この成長を律速する元素の特定と粒界拡散係数の決定を目的とした。24-50GPa,1650-2100℃,15-1500分の条件下で、計10回の実験を行った。回収試料の組織観察から、すべての実験条件でMgOとSiO_2の反応に伴うperovskite反応縁が確認された。また、得られた反応縁成長カイネティクスから、MgO成分の粒界拡散係数を、粒成長の効果を考慮して計算した。この結果から、下部マントル領域での鉱物の粒界拡散特性の議論が可能となった。 (研究2)鉱物が準安定相として地球深部に沈み込む場合、相転移境界からの過剰圧が徐々に大きくなるため、相転移メカニズムが変化し、相転移速度が不連続に増加する可能性がある。本研究では、単結晶ガーネットを32GPaを超える圧力領域で高圧相へ相転移(ポストガーネット相転移)させ、その急冷回収試料の分析から相転移メカニズムの圧力による変化を考察した。ポストガーネット相転移は、30GPa程度の圧力領域では新相が界面に核形成することが知られているが、本実験から、35-38GPa,1100℃以上の温度圧力条件で相転移メカニズムが変化し、粒内核形成が起こることが明らかとなった。粒内核形成は相転移速度を著しくに上昇させるため、沈み込むプレート内ではポストガーネット相転移がこのような高過剰圧領域で起こる可能性がある。
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